研究概要 |
本研究は,性格,及び,行動特性の個人差と身体健康との心理-生物学的な繋がりを,心理社会的ストレス時アロスタシス反応が機能的媒介変数として働くとするアロスタティック負荷モデルを基礎として,3年以上経過した後の縦断的行動疫学研究から明らかにすべく計画された(研究目的)。具体的には,CES-D質問紙によるうつ傾向やLOT-Rによる楽観性傾向が,精神的ストレス時血圧回復機能を媒介として身体健康へ影響するモデルの検証を行う予定である。 当該年度は,上記計画の1年目であり,35名(平均追跡年数3.5年,追跡調査時平均年齢24.4歳)の追跡調査を実施した。予備分析として,性格傾向,精神的ストレス時血圧回復機能,そして,身体健康度(BMI,収縮期および拡張期血圧,運動時間,喫煙歴から算出)の時間経過に従った安定性を確認した。また,性格特性と血圧回復機能,そして身体健康度の関連を,追跡年数と追跡時年齢を制御変数とした構造方程式モデル(SEM; structural equation model, 共分散構造分析)により分析した。 結果,運動時間と拡張期血圧回復性に再現性を確認できなかったが(各回帰係数(r)= -. 02, .10),他指標(CESD-D, LOT-R, BMI,収縮期および拡張期仰臥位血圧,運動時間,喫煙歴)は安定していた(各r = .36, .62, .78, .58, .61, .89, .40; いずれもp < .05)。また,SEMにより,うつ傾向得点と拡張期血圧回復機能(標準化パス係数= - .28),拡張期血圧回復機能と身体健康度(- .30)との間に,それぞれ関連がみられた(ただし,後者は有意傾向)。 サンプル数が少ないため,予備分析に留まったが,今後の調査を継続することで,おおむね仮説通りの結果が予測される。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下の通りに使用する計画である。 1.参加者謝金60名×3000=¥180,000,2.盲検者への謝金(臨時雇用)¥300,000,3.インピーダンス式心拍出量測定用テープ電極 ¥60,000,4.旅費:日本生理心理学会第31回大会(福井)シンポジウム話題提供者 ¥80,000,行動医学会(発表予定)¥80,000 なお,2012年度残予算は,上記使用計画品目の価格変動を補てんすることに使用する予定である。
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