研究課題/領域番号 |
24700735
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢星稜大学 |
研究代表者 |
太田 めぐみ 金沢星稜大学, 人間科学部, 准教授 (20434342)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 姿勢 / 子ども |
研究概要 |
石川県内の小学校に通う児童65人(6年生・11~12歳)を対象に姿勢に関する測定を実施した。姿勢の測定は前額面方向の立位姿勢を撮影した写真を分析する方法、および重心動揺装置を用い前後左右方向の重心の位置を測る方法を用いた。立位姿勢画像は、画像分析ソフト(Image J)を用いて分析し、左右の肩の高さで結んだラインと水平面との成す角度を求めた。その結果、1.8±1.4度(平均±標準偏差)の傾きが確認された。また、3度以上の傾きがある児童は20人(30.1%)、うち5度以上の傾きがある児童が2名(0.3%)存在した。 一方、重心動揺装置を用いた測定では、左右それぞれ50%ずつ体重がかかっている場合を基準として、左右それぞれにかかる体重の差(重心の偏り)が12.3±8.5%あることが確認された。また、69:31と片方の脚に過度に体重をかけている児童も存在した。しかし画像から確認された身体の傾きと重心動揺装置を用いた重心の偏りの間には相関関係は認められなかった。 また、一部の児童を対象に超音波診断装置を用いて腹部および大腿前部の左右の筋厚の測定を実施した。しかしながら、身体の傾きや重心の偏りが確認された児童であっても、筋厚の左右差は確認されなかった。これは、児童の筋厚が成人に対して薄いことで、左右差があったとしても、測定誤差に埋もれてしまうためと考えられた。 幼児を対象とした測定も実施した。この測定では、重心動揺計を用いて、体重の偏りを測定するとともに、身体活動量や体力に関する測定も実施した。これについては、現在、データの分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、子どもの姿勢と筋力や筋量、身体活動量との関係を検討すること、および身体活動量を増やすことにより、姿勢を改善できるか検討することである。平成24年度は、第1段階として、姿勢の観察・評価と生活習慣・運動量の調査を実施し、第2段階として、第1段階で姿勢が良い/悪いと評価された児童・生徒を対象とした測定を実施する計画であった。 第1段階の調査は、300~400人を対象とする計画であった。そこで、複数の小学校に協力を求めたが、調整が不調に終わり、授業中に教室に入って姿勢の調査を行うことは出来なかった。第2段階の測定や、平成25年度に計画している運動プログラムの提供まで視野に入れて依頼・調整をしたことが、不調に終わった原因と考えられる。この調査は、実際に姿勢が悪い子どもがどの程度いるのかを明らかにすることを目的としていることから、ある程度の規模で実施する必要がある。そこで、平成25年度も継続して実施するが、第2段階の測定や運動プログラムの提供とは原則として切り離して行うこととする。 一方、第2段階の測定については、当初は40名を対象の行う予定であったが、協力校に在籍する6年生の児童全て(65人)を対象に行うことができた。ただし、測定に使用できる時間に制限があったことから、筋力の測定や身体活動量の測定は実施することができなかった。そこで、交付申請書作成の際に、研究遂行上の工夫にも挙げたように、同一学園内の幼稚園に対象を広げ、在籍している園児に対し、重心動揺計を用いた測定および身体活動量、体力に関する測定を実施した。現在、データの分析中であるが、重心の偏りと身体活動量の関係について何らかの関係性が見いだせれば、25年度に計画している運動プログラム提供の準備を始めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の前半は、姿勢の観察・評価と生活習慣・運動量の調査に重点を置く。平成25年度から所属が変わったことから、新たに所属校周辺の学校(愛知県内・静岡県西部)に依頼をするとともに、前任校周辺(石川県内)の学校についても引き続き調整を図る。 児童の立位姿勢画像から、身体の傾きについて分析し、1.8±1.4度(平均±標準偏差)の傾きがあることが確認されたが、身体の傾きが何度以上ある場合、姿勢が悪いと判断するかについては一層の検討が必要である。身体のランドマークを基準とした、スティックピクチャーで、左右の傾きが異なる複数の画像を作成し、姿勢の観察・評価に協力してくれた学校やクラスの教員を対象に、どのレベルから姿勢が悪いと判断されるかというアンケートを実施するなどの工夫も検討したい。 また、平成24年度は姿勢の良し悪しと骨格筋量との関係を検討するために、身体の左右の傾きに着目し、前額面の画像を取得したが、矢状面の画像から、前後方向の偏りや、脊柱の彎曲具合を定量することも必要と考えられる。さらに、超音波診断装置を用いた筋厚だけでなく、生体電気インピーダンス法を用いた測定を追加することで、左右差の検討を行う予定である。 姿勢と身体活動量との間に関係があることが確認された場合は、平成25年度の後半に、姿勢が悪い子どもを対象に運動プログラムを提供し、その効果を検討する計画である。姿勢と身体活動量との間に関係性を見いだせなかった場合は、小学生もしくは中学生の被験者を追加し、検討を加える。それでも関係性が見いだせなかった場合は、姿勢評価の基準づくり、筋量との関係をより詳細に検討する方針としたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の大半は、測定協力者への謝金として使用する。平成24年度の身体活動量の測定に当たっては、同一学園内の幼稚園在籍者を対象としたこともあり、謝金を支払うことがなかった。平成24年度の測定データの分析結果次第では、小学生もしくは中学生を対象に姿勢および身体活動量の測定を実施することになるため、その協力謝金として使用する。さらに、平成25年度は、運動プログラムの提供を計画していることから、その協力者にも謝金を支払う。運動プログラムの提供では、拘束期間が長く、また前後に測定を実施することから、規定に見合った謝金を支払う。また、測定データの分析および運動プログラム提供時の補助者への謝金も支出する。 調査や測定の協力が得られた学校までの旅費、研究成果の発表に伴う旅費を支出する。 超音波診断装置を用いた筋厚測定を行う場合には、測定協力者の旅費を支出する。これは、首都圏から測定実施地までの交通費、日当、宿泊費が該当する。 その他に、超音波診断装置の運搬や、測定協力者への資料郵送等に関する費用、筋力計のメンテナンスに関する費用等を支出する。
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