研究課題/領域番号 |
24700739
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
西村 一樹 広島工業大学, 環境学部, 助教 (50550026)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 概日リズム / 生活習慣 / 健康関連尺度 / 不定愁訴 / 体温 |
研究概要 |
ヒトは,約24時間周期で変動する概日リズムを有する.概日リズムは,短期的あるいは長期的な要因によって乱れを生じる.個人の概日リズム把握は,健康管理のために重要である.我々は,覚醒中の舌下温の日内変動を客観的かつ定量的に評価する方法を考案した.平成24年度は,その評価方法を用いて舌下温の日内変動と生活習慣および健康関連尺度指標との関連性を明らかにした.若年者220名(20歳代)および中高齢者20名(平均年齢59歳)を対象に起床から就寝までの2時間毎に1週間の舌下温測定を行った.生活習慣に関する調査は,住居形態,通学方法,朝食摂取,睡眠時間,運動習慣,不定愁訴,疲労感,自覚的健康度に関する質問で構成された.健康関連尺度指標は, SF-36v2(健康医療評価研究機構)を用いた. 本研究の主な知見は,①朝食摂取習慣および運動習慣がない若年者の舌下温の日内変動のピーク値が出現する時刻が遅延し,舌下温のピーク値と起床時の差が低値を示す者の割合が高いこと.②起床時間,起床時間の一週間の変動係数と舌下温の日内変動のピーク値が出現する時刻との間に有意な正の相関関係が観察されること.③中高齢者は,若年者に比較して,舌下温のピーク値が早い時間帯で出現すること.である. 本年度の知見から,舌下温の日内変動のリズムが食事,運動および睡眠習慣の影響を受けることが示唆された.特に起床時刻との関連性が顕著であることから,起床時刻を一定にすることなどによって概日リズムの乱れは予防・改善できるものと考える. 平成25年度は,同様の調査を実施し,舌下温の日内変動と生活習慣および健康関連尺度指標との関連性を更に検討する.また,一過性の朝食摂取および軽運動の実施が,概日リズムに及ぼす影響を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施を予定した研究課題について,概ね遂行できたものと考える. 平成24年度は,若年者220名および中高齢者20名を対象に起床から就寝までの2時間毎に1週間の舌下温測定を行った.また,生活習慣に関する調査および健康関連尺度指標の測定を行った.主な知見は,①朝食摂取習慣および運動習慣がない若年者の舌下温の日内変動のピーク値が出現する時刻が遅延し,舌下温のピーク値と起床時の差が低値を示す者の割合が高いこと.②起床時間,起床時間の一週間の変動係数と舌下温の日内変動のピーク値が出現する時刻との間に有意な正の相関関係が観察されること.③中高齢者は,若年者に比較して,舌下温のピーク値が早い時間帯で出現すること.である.得られた知見は,地域の中高齢者を対象に本学が開催している健康づくり教室の対象者に健康づくり講話としてフィードバックを行った.さらに,国内外の学会(日本体力医学会,日本体力医学会中国四国地方会,ヨーロッパスポーツ科学学会)で発表し,学術的な評価を受けた.当初の予定よりも対象者数が少ないことから,平成25年度も同様の調査を実施する.若年者500名および中高齢者50名程度の対象者数を予定し,更なる検討を行う. 平成25年度の研究課題は,研究協力者とすでに研究打合せを済ませている.また,対象者にも研究参加の同意を得ており,研究課題に取り組んでいる.このことから,計画通りに遂行できる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,平成24年度と同様の調査を実施し,対象者数を増やし更なる検討を行う.また,一過性の朝食摂取および軽運動の実施が,体温,心拍,血圧応答の日内変動に及ぼす影響を検討し,朝食摂取および午前中の軽運動の実施が概日リズム形成に寄与するものとの研究仮説の検証を行う. 健康成人男性15名を対象者(インフォームドコンセントを実施し,同意が得られた者)とする.測定条件は,①コントロール条件(朝食を欠食し,軽運動を実施しない対照条件),②朝食摂取(7時半)と軽運動(8時半に最大酸素摂取量の40%強度の自転車運動15分間)を実施する条件とする.すべての条件は,起床後から就寝までの2時間毎に口腔温(電子体温計),血圧(触診法),心拍数(胸部双極誘導法)および心臓自律神経系活動(MemCalc法)を測定する.各指標の測定値から最小二乗法を用いて近似式(二次回帰曲線)を求める.近似式から,振幅(最高値と最低値の差),位相(起床後から最高値までの出現時間)を算出する.得られたデータを2条件で比較し,朝食の摂取および軽運動の実施が生理指標の日内変動に及ぼす影響を検討する. 得られたデータは,対象にフィードバックを行う.研究成果は,国際学会(ヨーロッパスポーツ科学学会),国内学会(日本体力医学会,日本体育学会,日本運動生理学会など)で公表し,評価を受ける.原著論文(査読あり)として学術雑誌に投稿する.パンフレット,ホームページ等を作成し,本研究の知見の普及に努める. 本研究は,広島工業大学高本登教授,長﨑浩爾准教授,安田女子大学野瀬由佳助教,吉備国際大学山口英峰准教授,川崎医療福祉大学小野寺昇教授,並びに各研究室の大学院生,学部学生を研究協力者として,遂行する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,平成24年度と同様の調査を実施し,対象者数を増やし更なる検討を行う.また,一過性の朝食摂取および軽運動の実施が,体温,心拍,血圧応答の日内変動に及ぼす影響を検討する. 心臓自律神経系調節の測定を行う心拍変動リアルタイム解析プログラム(MemCalc/Bonaly Light)を購入する.また,研究成果を第71回日本体力医学会中国四国地方会(徳島県),18th Annual Congress European College of Sport Science(ヨーロッパスポーツ科学学会,スペイン:バルセロナ)および第68回日本体力医学会(東京都)で発表を行い,学術的な評価を受ける.そのための学会参加の旅費並びに学会参加費を計上する.学術雑誌に投稿し,本研究の知見の公表を行う.論文投稿に必要な経費(英文校正費,論文投稿料,論文別刷代など)を計上する.研究協力者(対象者および検者)に対する謝金を支払うための経費を計上する.
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