研究概要 |
本研究のオリジナリティーは,身体活動の評価にITを用いた行動記録法を使うことにより,従来は困難であった大規模データによる行動内容と身体活動の関係を明確にした点である.本研究の身体活動分析ツールの特徴は,1日のライフサイクルに着目し,0時から23時59分までの行動を15分単位で記録することにより,トータルのエネルギー消費量と行動内容の関係に着目した点である. 当該年度にはインターネット回線を用いて,多人数の身体活動を同時一斉に収集可能なシステムを完成させ,インターネット調査会社を通じて30~69歳の全国2,298人のの身体活動データの収集を行った.このデータの分析により都市規模毎の総エネルギー消費量と交通行動の比較を行った.2298名の総エネルギー消費量の平均値は,2,608kcal/日であり,そのうち通勤・通学など交通行動におけるエネルギー消費量は9.6%であったことを示した.通勤・通学のエネルギー消費量において東京周辺都市が地方中核都市と地方中小都市よりも有意(p<0.05)に高いにもかかわらず,総エネルギー消費量においては,仕事におけるエネルギー消費量の影響により,東京周辺都市が地方中核都市と地方中小都市に比べて有意(p<0.05)に低い値であったことを示した. 本研究のデータより,東京周辺都市は,地方中核都市や地方中小都市と比較して,住宅密度,商店へのアクセス,歩道の有無などの環境要因の影響を受けて,交通行動によるエネルギー消費量が高まっている可能性が考えられたが,総エネルギー消費量に対しては,交通行動よりも仕事時のエネルギー消費量が与える影響が明らかに大きいことが示された.したがって,身体活動促進の介入には,交通行動の変容に加え,仕事時の行動に着目した介入を行うことが望ましいと考えられた.
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