研究課題
心血管病は、日本人の主要な死亡原因であり、その予防は日本国民の健康保持・増進に極めて重要である。日本人における心血管病増加の背景には食生活の欧米化があり、欧米食は日本食と比較して鉄、銅、亜鉛といったミネラルの含有が少ない傾向がある。体内のミネラル不足は、活性酸素種、特にスーパーオキシドアニオンの増加を惹起し、血管内皮障害などの組織損傷を生じ、様々な心血管病の病因・進展に関与する可能性が示唆されているが、抗酸化防御機構への関連を検討した報告は今までに存在しない。以上より、本研究では、血中ミネラル濃度が細胞外抗酸化防御機構、特に細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(EC-SOD)の分泌に与える影響の解明を目的とする。本研究は、日本原子力研究開発機構原子力科学研究所(茨城県那珂郡)に勤務する40歳以上の男性労働者のうち、研究参加に同意書の得られた738名(平均年齢50歳)を対象とし、EC-SOD濃度、一酸化窒素代謝産物濃度、そして鉄、銅、亜鉛などのミネラル濃度を健康診断時に採取した血液検体で測定し、ミネラル濃度が細胞外抗酸化防御機構へ与える影響を検討する。今年度までにEC-SOD濃度を2ステップELISA法で、一酸化窒素代謝産物濃度をGriess法で測定し、市販されているキットを用いて鉄、不飽和鉄結合能、そしてマグネシウムの血漿濃度を測定した。今後、銅や亜鉛などを測定後にデータを解析する方針である。本研究を広く社会に公表することで、日本国民の食生活の欧米化(日本食離れ)に警鐘を鳴らし、国民の健康意識向上や生活習慣是正への取り組みなど費用対効果に優れた治療戦略に寄与することが期待され、重要である。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度科学研究費を有効に使用し、鉄、不飽和鉄結合能、マグネシウムといった血漿ミネラル濃度の測定を行った。
平成25年度科学研究費を使用し、銅や亜鉛などを測定後に速やかにデータを解析し、論文を作成する。
該当なし。
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