近年、血中ミネラル濃度低下が酸化ストレスの増加に関与することが判明しているが、細胞外抗酸化防御機構に与える影響は十分に解明されていない。よって、本研究の目的は、「血中ミネラル濃度の減少は酸化ストレスを増加させるだけでなく、細胞外抗酸化防御機構の障害、特に抗酸化酵素である細胞外スーパーオキシドジスムターゼ (EC-SOD) の分泌障害に重要な役割を担っている」という仮説を検討することである。 本研究は、ある単一事業所に勤務する40歳以上の男性労働者969名のうち、研究参加に同意の得られた840名を対象とし、最終的に、EC-SOD遺伝子変異が疑われる200ng/mL以上の血漿濃度を有する者および心血管病の既往がある者を除外した809名を検討した。血漿中の鉄をニトロソPSAP法、不飽和鉄結合能をバソフェナントロリン法、マグネシウム濃度を比色法、そしてEC-SOD濃度は2-step ELISA法でそれぞれ測定した。総鉄結合能は、鉄と不飽和鉄結合能の和として算出した。 本研究参加者の鉄、不飽和鉄結合能、総鉄結合能、マグネシウム、そしてEC-SODの中央値 (四分位範囲) は、それぞれ44.0 (33.0-58.7) μg/dL、384.9 (327.1-447.2) μg/dL、433.4 (370.2-496.6) μg/dL、1.02 (0.79-1.28) mg/dL、49.6 (42.6-58.2) ng/mLであった。鉄、不飽和鉄結合能、総鉄結合能、マグネシウムとEC-SODの間に有意な相関関係はなかった。 本研究は、ミネラルと抗酸化酵素EC-SODの間で関連を明らかにすることはできなかった。血中ミネラル濃度の減少が細胞外抗酸化防御機構に与える影響を解明するためには更なる検討が必要である。
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