本研究の目的は,近赤外線分光法(Near-Infrared Spectroscopy:NIRS)を用いて計測した脳血流と人間の精神的変動との関係性を明らかにすることである。昨年度までに,タスク実行時におけるNIRS信号の計測および解析手法の検討を行った。昨年度に引き続き本年度は主に以下の項目について検討した。 1. 統計的解析手法を用いたNIRS信号の解析:NIRS信号と精神的変動との関係性を明らかにするために,NIRS信号に対して統計的特徴抽出手法を実行し,平常時とタスク実行時の違いがあるか比較検証した。複数人から計測したNIRS信号に対して処理を施した結果,平常時とタスク時において可視化によりその違いを明確にすることが可能となった。 2. 機械学習を用いた状態の判別:特徴抽出後に作成した特徴ベクトルを用いて,計測したNIRS信号から被験者の状態が判別可能か検証を行った。識別器の1つであるサポートベクタマシンを用いて,平常状態かタスク状態かという2状態の判別において約70%程度の精度で推定を行うことができた。 3. 異なるタスク実行時のNIRS信号の計測及び解析:暗算タスク実行時だけではなく,その他のタスク実行時においてもNIRS信号を計測するとともに上述した1.と2.の処理を行った。その結果,タスクとしては暗算タスクを実行した時にその変化がより顕著であることが明らかになった。 本研究では,NIRSを用いて人の状態推定が可能か検証を行い,平常時とタスク実行時との判定を行うことができた。しかしながらいくつかの問題点もあったため,今後も継続して本研究を進展させていきたい。
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