研究課題/領域番号 |
24700744
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
助友 裕子 日本女子体育大学, 体育学部, 准教授 (50459020)
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キーワード | 国際情報交換 / アメリカ / ヘルスプロモーション / がん対策 / Learning Partner Model / 自治体 |
研究概要 |
国民の2人に1人が一生涯のうちにがんに罹患すると推計されており、がん対策は喫緊の課題である。地域でがん対策を推進するには、科学的根拠のあるがん対策情報を普及させると同時に、国民ががんに目を向ける文化を育む必要がある。本研究は、自治体の市民向 け講座でがん対策情報を地域住民に普及させるためのプログラムを開発し(=LPMの構築)、プログラムを実施した時に、地域住民のがん対策情報認知度および態度にどの程度影響するのかを検証することを目的とする。 平成25年度は、介入プログラムの作成と実施および事前事後調査を実施した。介入プログラムは、介入対象自治体(都市部と地方部)それぞれにおいて、行政担当者、研究者により科学的根拠に基づいたがん対策情報を地域住民に普及させるための方策を検討しながら、プログラムを作成した。事前事後調査は、介入プログラムの前後に、質問紙を用いた配票留置法および郵送法による回収にて実施した。調査対象は、自治体の主催する市民向け講座を受講した地域住民(以下、第1学習者とする)およびその家族または友人(以下、第2学習者とする)(第1学習者1名につき第2学習者1名)とした。調査内容は、属性、がんに関する意識、がんに関する情報源とした。分析は、基礎集計のほか、事前事後比較、事後のみ第1学習者と第2学習者間の比較を実施した。 その結果、事前事後比較においては、第1学習者において講座の受講前後で知識の変化が認められたのに対し、第2学習者においてはその限りではなかった。また、事後のみの集計結果から、学んだ内容を共有したい人数について第1学習者と第2学習者間に明らかな違いが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年計画の2年目であり、プログラムの開発および介入が主たる研究計画であった。具体的には、東京都品川区(都市部)と千葉県白井市(地方部)の行政担当部署において調査協力を得てプログラムを開発・実施し、事前事後調査も完了した。 ただし、当初の計画では、介入群とともに非介入群を設け、事後調査終了後に非介入群へのフォローを予定していたが、自治体内部での調整を進める段階で、非介入群を設けることが懸念されたこと、自治体風土が先進事例の米国と異なる観点から、まず第1学習者と第2学習者の実態把握に重きを置いた分析を行いたいとの要望が強かったことから、先行研究に準じた研究デザイン(介入研究から観察研究へ)に変更する形で調査研究を実施している。この点が、当初の計画と異なる点であるため、現在までの達成度は「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に実施した調査の詳細な解析を進めるとともに、その結果を国内外において発表する。特に、平成24年度に訪問した先進地(米国サンディエゴ市)との情報交換が平成25年度も継続的に進んでいるため、当該地域への結果報告も視野に入れた研究のまとめを予定している。 自治体の市民向け講座は単年度事業ではなく、毎年受講対象者を新規に募って継続される事業であることから、平成26年度には前年度の検討結果をふまえた上で、より効果的ながん対策情報普及プログラムを完成させ、当該事業において実施できるよう当該自治体において提案する。 地域でのがん対策情報普及のための実践にもとづくプロセス評価を加味しながら、介入プログラムを分かりやすく整理する。プログラム実施にともなう普及効果に視点をあてて報告書を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査対象者が計画時の見込み人数よりも減少したため、調査協力としての謝金(クオカード)の支払額が大幅に減少した。その他、調査対象者の減少にともなう諸経費(印刷費等)が当初の計画よりも少ない金額で当該年度の研究活動が実施されたため、次年度使用額が発生した。 発生した次年度使用額については、調査対象者への結果報告を中心にその経費を費やすとともに、平成24年度(研究計画一年目)に先行事例の収集でご協力をいただいた米国カリフォルニア州サンディエゴ地域の研究者およびLearning Partner Modelプログラムの実践家らにも報告するための諸費用(翻訳業務等)として計上する予定である。
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