国民の2人に1人が一生涯のうちにがんに罹患することから、がん対策は喫緊の課題である。がん対策の推進には、科学的根拠のある情報が整備されると同時に、国民ががんに目を向ける文化を育む必要がある。そこで本研究では、地域の文化に配慮しながら健康施策の普及を行っている自治体主催の市民向け講座においてがん対策情報普及プログラムを実施した時に、受講者および受講者以外の地域住民のがん対策情報認知度・態度にどの程度影響するのかを検証することを目的とした。受講者が非受講者であるLearning partnerに情報伝達するプロセスが明らかになれば、地域住民に対する実践的ながん対策情報普及方法の基礎を提供することになると考えられる。 最終年度は、前年度調査結果の分析を通じて、LPMに基づいたプログラムのあり方について検討し、初年度に訪問調査を実施した米国カリフォルニア州San Diego市の大学や地域住民とのディスカッションを行った。その結果、自治体主催の市民向け講座において、学習内容が受講者から地域へと波及効果をもたらす可能性として、受講者の社会的ネットワークを好ましい情報伝達経路ととらえたLearning Partner Modelの有用性が示された。今後、見直された講座企画内容によるプログラムを開発し、介入研究に発展させることで、自治体の市民向け講座事業が地域の健康水準向上に寄与するためのプロセス評価を行うことが可能となると考えられた。
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