本研究は,ポジティブ感情が心血管系反応に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.具体的には,(ⅰ)精神作業前のポジティブ感情が心血管系反応に及ぼす影響,(ⅱ)精神作業中のポジティブ感情が心血管系反応に及ぼす影響を明らかにするとともに,(ⅲ)ポジティブ感情を用いたストレスマネジメントの可能性について検討した.(ⅰ)精神作業前のポジティブ感情が心血管系反応に及ぼす影響について,作業前の安静時の感情に関わらず、「快」画像提示によるポジティブ感情誘発は,作業中の総末梢血管抵抗上昇の抑制及び作業後の血圧と総末梢血管抵抗の回復を促進する効果があることを示している。最終年度は前年度に引き続き,(ⅱ)精神作業中の感情が心血管系反応に及ぼす影響,(ⅲ)ポジティブ感情を用いたストレスマネジメントの可能性について検討した.その結果,「作業成績が一定水準(85%)を上回れば出来高に応じて報酬が加算される」ポジティブ教示は作業中の心臓反応(一回拍出量)に影響を及ぼす可能性が示唆された.(ⅰ)と(ⅱ)の結果から,精神作業前の安静時の感情に関わらず,画像提示や教示によるポジティブ感情の誘発は,精神作業中および作業後の心血管系反応を改善する効果が明らかとなり,ポジティブ感情を用いたストレスマネジメントへの応用可能性が示唆された.
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