高齢者の躓きは、筋骨格系機能の低下による足拳上動作の困難、視覚や障害物高の認知能力の低下により生じやすい反面、日常生活のトレーニング等によって改善可能性が高いことも特徴的である。我々はこれまで健常な高齢者を対象に転倒リスク関連要因を調査し、転倒関連体力を評価する上で有効なテストを検討してきた。その中でも特にOSFS(Obstacle-Single leg forward step) testは、ROC分析や判別分析などで転倒リスクが高い高齢者や躓きやすい高齢者を判別するうえで有効と判断された。 一方、我々は、高齢者の障害物跨ぎ越し動作及び転倒回避動作を3次元動作解析システムを用いて測定した。その結果、高齢者の歩行特性として体幹の大きな縦揺れ、小さい歩幅及び股関節角度が観察された。躓きによって転倒した経験がある高齢者は、脚の接地時や離床時の足底角が小さく、目でみる障害物の高さと拳上脚の高さ間に差がある等が観察された。 障害物跨ぎ越し動作の特徴として、高齢者は、高い障害物を跨ぐ前に準備姿勢(上体を側屈、爪先を低く)をとり、Lead limbは股関節を内股及び足首を背屈しながら障害物を跨ぎ、Trail limbは上体を前傾させた状態で移動させる。これは、足を真上へ持ち上げる脚力のない高齢者特有の動作と考えられる。 今後は、明らかになった高齢者の転倒関連体力、障害物跨ぎ越し動作及び転倒回避動作特性を参考に、躓きやすい高齢者をスクリーニングするための評価尺度を検討する。
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