研究課題/領域番号 |
24700754
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
森島 真幸 大分大学, 医学部, 助教 (40437934)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自発運動 / 脳内モノアミン / 心臓自律神経活動 / 心拍変動解析 |
研究概要 |
本事業では、我々が世界で初めて確立した高自発運動性を示すモデル動物SPORTS ratを用いて、このモデルラットの高自発運動性に働く因子である脳内モノアミンが運動習慣の制御だけでなく、心筋肥大の形成や心機能調節に関与しているかどうか、またその詳細な調節機構を明らかにすることを目的とした。 脳マイクロダイアリシスの結果、SPORTSラットのモノアミン放出量は対照ラットに比べて有意に上昇しており、これにより自発運動が誘発されていることがわかった。またテレメトリ埋め込み法により安静時及び自発運動時のSPORTSラットの心電図を記録し心拍変動スペクトル解析を行ったところ、SPORTSラットは対照ラットに比べ速い心拍を示し著名な心肥大を呈することが判明した。また心拍変動解析の結果から、安静時のSPORTSラットの心臓交感神経活動は亢進しており、それに伴い心拍数が増加していることがわかった。一方で、SPORTSラットの心筋筋原線維は肥大していたが線維化は見られなかったため、SPORTSラットの心肥大は交感神経緊張による圧負荷に応答した変化であるが、生理的な肥大シグナルにより制御されている可能性が示唆された。 今後も運動意欲の制御中枢である脳に再度着目し、脳内モノアミンが自発運動の制御のみならず心機能調節や心筋の肥大(成熟)に関与することで、自発運動に適応する心臓循環機能を獲得することに貢献する可能性をin vivo生理学実験により検証していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳内モノアミンと運動習性との連関作用を解明するために、自発運動前後の脳内モノアミンや心機能の解析を行っているが、ラットの心電図記録、及び脳灌流サンプルの採集は生理的な状態で継続的に行うために、実験中のトラブル(運動中に脳カニューレがはずれてしまうなど)が多々ありサンプリングやデータ収集までに多大な時間を要したため、当初予定していた遺伝子発現解析実験に遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、脳内モノアミンと運動習性との連関作用を解明するために、自発運動前後の脳内モノアミンや心機能の解析を行っているが、自発運動負荷中に脳カニューレがはずれてしまうことが多々あり、脳灌流サンプルの回収に多大な時間を要したため、当初予定していた遺伝子発現解析実験に遅れが生じている。しかしながら、自発運動中ラットの脳カニューレの固定方法を改めると改善がみられたため、我々が考案した脳カニューレとテレメトリ心電計の同時装着による実験系は脳ー心連関作用による自発運動制御機構の解明に貢献すると考えられる。運動により多くの遺伝子群やタンパク群の発現変動が起こることは予想できるため、今後は、遺伝的な差を調べるために、自発運動をさせない安静群のSPORTSラット及び対照ラットの心筋を採取し、RNAあるいはタンパクを抽出し心筋収縮に関わるタンパク群(イオンチャネル、細胞内キナーゼ、転写因子等)の解析を分子生物学的手法で行う予定である。さらに、心機能異常を伴わずに運動量を制御する脳内シグナル分子が同定できた後には、その分子が生体にとって質的良好な運動基盤分子であることを遺伝学的、及び生理学的に証明できるか実験により証明することが重要と考えられる。このためには、同定された分子を遺伝子操作により、欠損あるいは過剰発現させたモデル動物を作成し、SPORTSラットでみられた表現型があらわれるかどうかを解析する必要があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後も脳内モノアミンが運動習慣(自発運動)の制御のみならず、心拍数制御や心筋の肥大形成に関与することで、自発運動に適応する心臓循環機能を獲得することに貢献する可能性を生理学実験により証明していきたい。そのためには、安静時、自発運動時の心電図記録、および脳灌流サンプルの採集を今後も引き続き行う予定である。 もし、SPORTSラットの心拍数の制御が心臓自律神経活動だけでは説明ができない場合は、心筋細胞の自動能に作用する未知の心拍数制御因子があることを考慮し、その因子と脳内モノアミンが相互作用することによっても運動習慣が規定される可能性も検討していきたい。具体的な方法としては、SPORTSラットと対照ラットから心筋を採取し、RNA抽出の後DNAマイクロアレイ解析を行い遺伝子発現の差異を網羅的に解析する。最終的には、自発運動を引き起こす脳内因子が生体にとって質的良好な運動基盤分子であることを証明したい。
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