研究課題
本研究では、我々が世界に先駆けて発見し樹立した高自発運動性ラットSPORTSを用いて、このラットの運動習慣規定因子である脳内モノアミンが運動習慣の制御だけでなく心筋肥大の形成や心機能調節に関与しているかどうかを生理学的に解析する。また、その詳細な調節機構を明らかにすることを目的とする。本年度の事業では、脳内モノアミンは運動習慣の制御のみならず、心拍数制御や心筋の肥大形成に関与することに貢献する可能性を精査するため、SPORTSラットの脳内モノアミン動態を薬剤(MAOA阻害薬)投与により再現したモデルを作成し、自発運動量と心拍変動解析、また心拍数制御に関わるタンパク質の発現解析を行った。リアルタイムPCR法やWestern blot法により、SPORTSラットの心拍調節に関わるイオンチャネルやキナーゼ、心筋特異的転写因子の発現を調べたところ、SPORTSラット心筋では、L型カルシウムチャネル(Cav1.2)mRNA発現及びタンパク発現が顕著に亢進していた。また、同様にMAOA阻害薬投与群(脳内カテコラミン増加群)においてもCav1.2 mRNA及び、タンパク発現の亢進が認められた。さらに、心筋におけるCav1.2の転写を制御する転写因子であるCREBのリン酸化の亢進が両群で認められ、脳内モノアミンの増加による心拍数増加には、転写因子CREBを介したCav1.2発現の増加が関わる可能性が示唆された。一方、形態学的観察の結果からは、MAOA阻害薬投与群では心筋細胞のサイズが対照群に比べやや増加する傾向が認められ、脳内モノアミン動態を変化させることで、運動(圧負荷)を介さなくとも心筋細胞を成熟させられる可能性が示唆された。今後さらなる追実験が必要である。
2: おおむね順調に進展している
マイクロダイアリシスによる脳内モノアミン定量とテレメトリー送信機による心電図記録を同時に測定するためのシステムの稼働がうまくいくようになり、安定した実験結果が得られるようになったため当初の実験計画のとおりに進められた。安定した結果が得られたことから、SPORTSラットの運動習性を規定するモノアミン濃度がある程度わかり薬剤実験に進むことができた。
自発運動と心拍数を制御する分子が心筋肥大(成熟)にどのように関わるかについて引き続き検証実験を行う。さらに、SPORTSラットと薬剤投与により脳内モノアミン構成を再現したモデルラットの自発運動量や心電図、脳内モノアミン濃度を測定したのち心筋を採集し、RNA抽出やタンパク抽出を行い心筋の構造的あるいは電気的リモデリングに関わるタンパク群(イオンチャネル、細胞内キナーゼ、転写因子等)の細胞内シグナル経路の解析を行う。具体的には、心筋からRNAを抽出しDNAマイクロアレイ解析を行い遺伝子発現を網羅的に解析する。DNAマイクロアレイ実験の準備はすでに整っている。
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Journal of Toxicologic Pathology
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