平成24年度はラットに急性運動を行わせた直後の骨格筋におけるニトロトリプトファン含有タンパク質について、2次元電気泳動と抗ニトロトリプトファン抗体を用いたウェスタンブロッティング、液体クロマトグラフィー/質量分析装置による解析を行うことで、急性運動直後の骨格筋ではα-アクチンのトリプトファン残基のニトロ化修飾に変化が生じる可能性を見出した。一方、近年、細胞内のシグナル伝達タンパク質であるAKTとERK1/2のチロシン残基のニトロ化修飾が、それらの機能に影響を及ぼすことが報告されている。そこで平成25年度は急性運動直後の骨格筋におけるα-アクチンのトリプトファン残基のニトロ化修飾についてさらに検討するとともに、AKTとERK1/2のチロシンとトリプトファン残基のニトロ化修飾が急性運動直後の骨格筋において変化するのかどうかを検討した。骨格筋におけるα-アクチンのトリプトファン残基のニトロ化修飾は、2次元電気泳動でタンパク質を分離した後、α-アクチンのスポットをゲルから切り出して、そのゲルを用いてさらにSDS-PAGE、ウェスタンブロッティング、タンパク質染色を行うことで検討した。その結果、骨格筋におけるα-アクチンのトリプトファン残基のニトロ化修飾は運動直後の筋において減少する傾向にあることが認められた。次にAKTとERK1/2のニトロ化修飾について各タンパク質に特異的な抗体を用いて免疫沈降を行い、抗ニトロチロシン抗体と抗ニトロトリプトファン抗体でウェスタンブロッティングを行うことで検討した。運動群と非運動群においてAKTの抗ニトロチロシン及び抗ニトロトリプトファン抗体の陽性反応は全く検出できなかった。またERK1/2の抗ニトロチロシン抗体の反応も検出できなかった。一方、ERK1/2の抗ニトロトリプトファン抗体の陽性反応は両群において検出できた。しかしながら、急性運動による影響は認められなかった。
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