小児期からの肥満継続が成人期におけるメタボリックシンドローム(Mets)や脳循環器疾患につながる可能性が極めて高いことから、小児期の肥満やMetsは小児期内に改善すべきである。しかし、その改善に大きく貢献する遺伝および身体組成の特性は不明である。応募者は平成17年から平成23年度における科研費の研究において112名(7から12歳)の肥満および非肥満の小児を対象に、肥満関連遺伝子や身体組成、血液性状などを検査・測定を行った。本研究は、この対象者について5~7年後に相当する年度に上記と同一の測定を行い、小児期内で肥満やMetsを改善することができた小児と改善することのできなかった小児を抽出し、両者の遺伝素因や身体組成を比較して小児期における肥満やMetsの改善に必要な因子を探る予定であった。しかし、研究協力機関の閉鎖や研究代表者の所属異動などによって対象者の収集と同一の測定が困難となったため、将来的にMetsを合併する可能性が高い幼児期の重度肥満に注目し、幼児期における重度肥満の出現状況について検討を行った。年少期の幼児1192名を対象に、体格を3年間にわたって縦断的に調査した結果、肥満度30%以上の重度肥満の幼児(男女)は、年少0.2%(2名)、年中0.5%(6名)、年長1.4%(16名)と加齢とともに漸増した。また、年長で重度肥満であった16名(男児9名、女児7名)のうち、13名(82%)は年少の時点で肥満を呈していた。これらの結果は、将来的にMetsを合併しやすいと考えられる重度肥満が幼児期に出現し、漸増し始めること、そして小児期における重度肥満は年少時点で顕在化し始めることを示唆している。
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