研究課題/領域番号 |
24700768
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
中原 英博 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 講師 (90514000)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鍼通電刺激 / 血圧 / 心拍数 |
研究概要 |
平成24年度の研究計画は、最適な鍼通電条件を確立し、降圧効果に最適な新たな手段を探索することであった。 本研究の内容の一部は、我々の研究室において平成21年度より取り組んでおり、これまでに前腕のげき門穴(WHO; PC4)に対して、刺激なし、0.5Hz、1Hz、5Hz、10Hzの5つの刺激頻度で通電を行った結果、刺激に伴う降圧及び徐脈効果は、低刺激周波数条件(1Hz)で、かつ刺激持続時間を長くすると顕著に表れることが明らかになった。 平成24年度の研究では、最適な周波数条件に加えて、被験者13名(男性8名、女性5名)に対して、鍼通電刺激なし、1V、5V,10Vの4条件で鍼通電刺激を行い、降圧及び徐脈効果に最適な鍼通電刺激条件の探索を更に推進した。鍼の刺入は、膝下に存在する足三里穴(WHO; ST36)に刺鍼し(ステンレス製鍼、直径:0.16mm、長さ:40mm)、鍼刺入部位より下方10cmに電極を貼りつけ、その間に鍼通電刺激(刺激周波数:1Hz、パルス幅:5ms、方形波)を6分間行った。その結果、1Vおよび5Vの条件下において、血圧が低下する傾向を示し、特に5Vの条件下においてその応答は顕著であった。しかしながら、全条件下において平均の心拍数に有意な変化は認められなかった。 従来利用されてきた徒手による鍼刺激は、施術者の技量によって変動が大きく、刺激の強度、頻度や時間などの条件を正確にコントロールすることが困難であった。それゆえ鍼刺激に対する自律神経活動および循環応答に関する定量的なデータやその再現性に関する科学的データが得られにくく、現状では、根拠に基づく医療が広く実践されるには至っていない。本研究において、再現性が高く、刺激条件を容易にコントロールできる鍼通電刺激を用いて、降圧および徐脈効果に最適な条件を探索することは、鍼の基礎研究を進める上で重要性は高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画である、最適な刺激強度の研究はおおむね順調に進み、5Vの条件下で顕著な降圧効果が認められた。また、我々の研究室では、1Hzの低周波数刺激条件において、有意な降圧および徐脈効果が確認されており、循環調節機能に影響を及ぼす最適な鍼通電刺激条件は確立されつつある。これらの研究成果は、7月末に開催されるバイオメカニズム学会において、その内容が採択され、発表する予定である。また、上記の内容の一部は、海外雑誌に論文投稿を行う準備をすすめており、平成25年度には投稿する予定である。 しかしながら、今年度の研究結果において、前腕の経穴(ゲキ門穴)と下腿の経穴(足三里穴)との応答性が異なる傾向が見られた。実際には、前腕の経穴部位に対する鍼通電刺激においては、心拍数及び血圧の両方の減少が認められたが、下腿の経穴部位では、前腕部位と比較して大きく血圧が低下する傾向が認められた。 一方、前腕の鍼通電刺激では、有意な心拍数の低下が認められたのに対して、下腿への通電刺激では顕著な徐脈効果は見られなかった。それゆえ、降圧および徐脈効果をもたらす、最適な鍼通電刺激の条件の探索を行うために、鍼通電刺激を行う部位の検討という新たな課題が生み出された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度において、降圧および徐脈効果をもたらす、最適な鍼通電刺激条件の刺激周波と強度については、おおよそ確立されつつある。しかしながら、平成24年度の一連の研究結果から、鍼の刺入部位によって応答性が異なる可能性が考えられることから、平成25年度の研究では、健常学生10名を対象に、先ず「鍼通電刺激を行う部位の違いによってもたらされる降圧および徐脈効果への影響」を明らかにすることを主な研究課題として計画している。実際には、前腕と下腿に存在するそれぞれの経穴部位に対して、本年度までに明らかにされた鍼通電刺激条件(刺激周波数1Hz、刺激強度5V、パルス幅5ms、方形波)の統一条件で通電刺激を行った際の、血圧および心拍数応答を比較検討する。 その研究課題が解決した上で、当初の研究計画でもある、中高齢と健常学生のデータの比較を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書に記載したとおり、主要な実験機器は、森ノ宮医療大学・生理学研究室にすでに備付けのものを使用する。しかしながら、現在使用している小型心電テレメータは、ノイズの発生などの不具合が多く見受けられることから、効率よくデータを収集するために必要な物品に費用を費やす予定である。実際には、ノイズ除去装置を有している新たな心電図計測システムとデータ処理システムを購入する予定である。 上記した物品以外の研究費については、研究遂行および成果発表の迅速化・効率化を主眼に置いて研究費を使用する計画である。
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