平成26年度の研究では以下の実験を行った。 健常大学生16名をランダムに2群に振り分け、膝下部に鍼通電刺激と徒手刺激をそれぞれ行った際の血圧の応答を比較した。鍼通電刺激、そして徒手による鍼刺激中ともに、刺激前と比較して平均血圧は低値を示した。二元配置の分散分析の結果、鍼刺激の主効果のみが有意であった。 健常大学生30名を被験者として、徒手による鍼刺激が引き起こす心拍応答を、膝下部、腰部、前腕部、そして下腿部の4カ所で比較し、鍼刺激がもたらす心拍応答の部位差を検討した。それぞれの部位に対して鍼刺激を行った結果、膝下部(n=16)では、刺激なし時66.9±16.3拍/分から刺激時62.3±16.4拍/分、腰部(n=16)では、刺激なし時67.8±16.3拍/分から刺激時62.6±15.4拍/分、前腕部(n=13)では、刺激なし時70.4±14.3拍/分から刺激時67.1±13.3拍/分、下腿部(n=13)では、刺激なし時72.3±14.9拍/分から刺激時66.8±14.1拍/分と、それぞれの部位に対して徒手刺激を行うことで有意な心拍減少効果が認められた(p<0.05)。 正常血圧値を示す被験者(N=12)及び収縮期血圧140mmHg以上そして拡張期血圧90mmHg以上を示すⅠ度高血圧を示す被験者(N=2)を対象に、膝下部に徒手鍼刺激を行った結果、正常血圧値を示した被験者では、刺激なし時64.1±12.4拍/分から刺激時60.0±11.4拍/分(-4.1拍/分の減少)と有意な減少効果が認められた(p<0.001)。また、Ⅰ度高血圧に該当する被験者においても同様に、刺激なし時73.4拍/分から刺激時68.3拍/分と心拍数が低下する傾向が示され(-5.2拍/分の減少)、迷走神経活動の指標として用いられるRMSSD値も、22.3msから36.1msと増加する傾向が認められた。
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