本研究では、筋萎縮の動物・細胞モデルを用いて、筋萎縮に関係するmicroRNA (miRNA)の同定を実施した。初年度、筋細胞に分化誘導したC2C12細胞に筋萎縮誘導剤であるデキサメタゾンを曝露することにより、miR-503の発現が誘導されることを明らかにした。さらに、miR-503の阻害剤を用いた実験により、miR-503が筋萎縮関連遺伝子であるAtrogin-1の発現制御に関与する可能性を見出した。また、筋萎縮に関連する新たなmiRNAを同定するために、老齢ラットおよび若齢ラット骨格筋の網羅的発現解析を行った。その結果、老齢ラットの長指伸筋・ヒラメ筋で発現変化を示すmiRNAをそれぞれ9種類・4種類同定した。最終年度は、初年度に同定したmiRNAの内、老齢ラットの長指伸筋で顕著に発現変化を示した5種類のmiRNAについて研究を行った。これらmiRNAの定量RT-PCRを行った結果、網羅的発現解析と同様に、老齢ラットの長指伸筋において4種類のmiRNA の発現が増加し、1種類のmiRNAの発現が低下していた。これらのmiRNA が、生物種間で共通して発現変化を示すかどうかを明らかにするために、老齢マウスと若齢マウスの長指伸筋について定量RT-PCRを行った。その結果、4種類のmiRNAが老齢ラットの実験と同様の発現変化を示すことが分かった。また、発現が低下していたmiRNAの標的タンパクの発現が増加していることも明らかとなった。 本研究により、老齢ラット・マウスの骨格筋において発現変化を示すmiRNAが同定された。これらのmiRNAは加齢性の筋萎縮に関係する可能性が考えられ、今後、筋萎縮における役割を明らかにすることで、筋萎縮の予防・治療法の新たな標的分子としての有用性が検証できるものと考えられる。
|