研究課題
本研究では、超音波画像計測によって得ることができる筋の厚さ(筋量)や筋の繊維化の状態(筋の質)の情報によって、高齢者の介護予防のための運動器リスクのスクリーニングやサルコペニアの診断に用いることのできる、新たな筋機能評価指標を検討することを目的とした。このために、地域在住高齢者の大規模集団において大腿四頭筋部の超音波画像を計測し、運動器リスクやサルコペニア関連指標との関係を横断的・縦断的に検討した。対象者は、包括的な生活機能検査「お達者健診2011」受診者であった。受診者は、東京都板橋区のうちの9地区に在住する65歳~84歳の男女全員(施設入居者を除く)に案内状を発送し募集した。913名がこの健診を受診した。さらに、1年後、2年後に追跡のための健診を行った。大腿四頭筋部の超音波画像計測には「みるキューブ(グローバルヘルス社製)」を用い、椅子に座り膝関節90度屈曲し、筋を弛緩させたときの膝蓋骨上縁から15cm近位の画像を記録し、大腿筋厚を測定した。さらに、筋の繊維化の程度を画像解析ソフトウェア(Adobe Photoshop Element 7.0)を用いて平均輝度により評価した(大腿EI)。これらの指標と基本チェックリストによる運動器リスクや、生体インピーダンス法による筋肉量、膝伸展筋力、歩行速度などのサルコペニア関連指標との関係を検討した。その結果、横断的には大腿筋厚、大腿EIはともに運動器リスクと関連があり、特に大腿EIが運動器リスクと独立した関連があることが示された。一方、縦断的には運動器リスク発生への大腿筋厚、大腿EIの関連は有意ではなかったが、将来的な筋肉量減少に対しては有意な関連が認められた。これらのことから、大腿筋厚、大腿EIは運動機能低下の予測については限定的であるが、サルコペニアの簡易スクリーニングには活用できる可能性が示唆された。
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Geriatrics and Gerontology International
巻: 14 Suppl. 1 ページ: 93-101
doi: 10.1111/ggi.12197