研究実績の概要 |
これまでに中高齢男性において遊離テストステロン(FT)の低値が筋量の減少と関連すること、また余暇身体活動習慣が血中FTレベルを保持することを明らにしてきた。本年度は血中のFTと余暇身体活動との交互作用が四肢筋量へ及ぼす影響を解明することを目的とした。 「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の第1次調査から第7次調査に参加した40歳以上の男性のべ4,371名のデータを用いた。DXAに基づくSMIより、日本人の若年成人平均値-2SDにあたる6.87kg/m2未満を筋量減少とした。FTは日本人40歳代平均値の-2SDにあたる7.7pg/ml未満をLOW群とした。余暇身体活動は活動無し群、2.5METs以上の軽強度実施群、4.5METs以上の中強度以上実施群の3群に分けた。従属変数に筋量減少の有無、独立変数にFTレベル、余暇身体活動レベル並びにそれらの交互作用項、調整変数に年齢を投入した一般化推定方程式による解析の結果、FT×余暇身体活動の交互作用項は有意であった(p<0.05)。そこで従属変数に筋量減少の有無、独立変数にFTレベル、調整変数に年齢を投入した一般化推定方程式による解析を余暇身体活動レベル別に実施し、FT-Normal群に対するFT-LOW群の筋量減少のオッズ比を算出した。その結果、余暇身体活動無し群ではFT-Normal群に対するFT-LOW群の筋量減少のオッズ比は4.97(95%CI:1.17-21.07)であった。また中強度以上活動実施群ではFT-Normal群に対するFT-LOW群の筋量減少のオッズ比は2.67(95%CI:1.08-6.65)であった。一方、軽強度活動実施群では関連を認めなかった。 以上より2.5~4.4METs相当の軽強度余暇身体活動の実施はFT低値と関連する筋量減少の抑制に有効である可能性が示唆された。
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