研究課題/領域番号 |
24700777
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
李 秀眞 弘前大学, 教育学部, 講師 (30588926)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 世代間支援 / 日韓比較研究 |
研究概要 |
平成24年度の計画に基づき、日本と韓国の世代間支援と子世代の夫妻関係に与える影響について分析・国際学会発表(7月)および、インタビュー調査項目設定のための予備調査(7月、12月)を実施した。 分析結果は、男性において日本と韓国で逆の結果が得られた。日本の男性は、自分の親に経済的支援を多く行っているほど夫自身が感じる結婚満足度は低くなった。一方、韓国においては、夫の親への経済的支援が多いほど夫が認識する結婚満足度は増加し、妻も同様の傾向を示している。これらの結果の背景として、大量調査では明らかにすることができない要因については、インタビュー調査を通じて明らかにしていく必要があるため、それに向けての予備調査を実施した。 7月には、学会発表と併せて、韓国の現職の大学教員らに韓国の若者の現状や親子関係について、3世代経験者の観点からの親子関係について、元高校教員経験者の観点から高校生の親子間での扶養に対する意識について、結婚を予定している当事者の観点から結婚決定にあたっての配偶者の親を扶養することに対する負担感についてお話を伺った。また、12月には日本の実情を確認するための調査を行った。調査対象者としては既婚子をもつ父親の立場、共働きしながら子育てをしている若い世代の母親の立場、大学生と常に接している大学教員の立場にいる4人に話を聞いた。既婚子をもつ父親には、既婚娘、孫との関係を中心に語ってもらったが、孫の誕生とともに孫への支出が増えたという。共働きで、二人の子育て中の30代の母親は、両家の親から普段の育児支援を受けていたが、ただ、夫側の親からの育児支援は多くないが、子育て費用に代わる経済的支援はもらっているという。一方、親からの経済的・育児支援に対して既婚子世代からの経済的支援は行っていなかった。二つのケースから、親子間世代間支援が、3世代間関係にまで拡大していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度には、世代間支援と夫妻間満足度について、大量調査データを用いての分析、学会発表また、文化的背景等を踏まえた解釈を深めるためのインタビュー調査のための予備調査を実施することを計画しており、概ねスケジュールとおりに進行することができた。 ただし、学会発表をもとに、英文学術雑誌への投稿まで至るために試みたが、原稿を執筆し、研究者仲間からの意見等を参考に修正するなどの作業を進めており、英文学術雑誌への掲載にむけて着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度には、日本と韓国における本格的なインタビュー調査を実施するとともに、H24年度の研究成果を論文としてまとめ、国内外の学術雑誌へ投稿し、掲載されるようにする。特に、学術雑誌への掲載には自分がコントロールできない時間のスケジュールを要するために、執筆作業のスピードを調節する必要があると考えている。 インタビュー調査の実施スケジュールは、日本においてはH25年度5月~8月、韓国においては、8月~9月を予定している。インタビュー地域に関しては、日本は東京・首都圏、韓国はソウル・ 首都圏にする。インタビュー調査の内容整理・分析は10月~12月、投稿論文としてまとめる作業はH26年1月~3月に行う。H24年度行ったEASS2006の分析結果と照らし合わせて、整合性を確認しながら、論文としてまとめる。 具体的なインタニュー項目としては、世代間支援に実態に対して、夫の立場、妻の立場での認識を中心に設定する予定である。成長環境(出生順位や、親から言われてきた規範、親の経済的地位等)、結婚・出産時の両系の親からの支援があったか、孫に対する親世代の経済的支援状況、親世代の老後準備状況およびそれに対する話し合う頻度、親の年金受給状況などを含み、世代間支援実態より、夫、妻それぞれが感じる夫妻関係満足度に影響すると予測される認識の側面を、インタビュー対象者のプライバシーを害しない範囲で伺う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
英文校正および投稿費としていた分が繰越金として309,200円があるが、これに関しては、今年度達成することを目指しているため、同じ費目に充てることにする。 H25年度の計画の主な柱であるインタビュー調査実施のために、600,000円(東京3日間×5回、ソウル7日×2回、インタビュー調査協力謝金等を含む)を充てる。 分析のための統計ソフトのバージョンアップ、文献のWeb入手等のために200,000円を充てる。 また、追加調査が必要な場合を備えての通信費用、国内学会誌投稿料として100,000円を充てる。
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