研究課題/領域番号 |
24700778
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊池 佐智子 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (50409471)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 屋上緑化 / PVパネル / 地表面温度 / パネル周辺温度 / 発電電圧 / 植物生育 / 光量 |
研究概要 |
神奈川県川崎市多摩区にある明治大学生田キャンパスにて、PVグリーンシステムを設置し、7月から実測を開始した。屋上緑化による暑熱環境の緩和効果に着目し、当初予定していた実験区とは異なり、パネルの傾斜角を33.1度と5度として、人工芝面を除いた緑化面とコンクリート面にパネルを設置した。パネルの角度は、基準となる府中において、年間を通して効率的に発電できる傾斜角(33.1度)と、風圧と耐荷重の関係から既築建築物上でも設置可能な傾斜角(5度)とした。 計測期間中、基準国設置した日射計で計測した日射量から、パネル全面もしくは一部が雲に覆われることなく発電できたと考えられたのは、8月21日、9月13日、10月1日、16日、19日の5日間であり、この5日間を対象に今年度は解析した。パネル下に設置した温湿度データロガの値から、緑化面に設置した33.1度区(以下、基準区)と5度区(以下、緑化低位区)において、潅水後の蒸発散効果によって、計測地点の気温が低下したことが確認された。コンクリート面に設置した33.1度区(以下、コンクリ区)と比較すると、最大11.2度の差が生じた。 発電量は、発電電圧(mV)と電流(A)に分け、その関係性を分析した。欠測値が多かった緑化定位区のデータは外した。基準区とコンクリ区のデータを用いて、縦軸に電流(A)、横軸に発電電圧(mV)を配した散布図を作成し、回帰式を算出した。その結果、回帰係数は極端に小さいものの、コンクリ区に比べて基準区のほうが効果的に発電していることが示された。 IV特性は高額な機器が必要となるため、計測できた基準区、緑化低位区、コンクリ区のデータを用いて、発電電圧(mV)と電流(A)の散布図を作成し、回帰式を求め、温度による差を求めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
台風や大風等の気象により、数回パネルが倒されたことにより、計測ができず、欠測値となったことを除けば、順調にデータが計測できている。 また、冬期も芝生面を維持するため、WOS(ウィンターオーバーシーディング)を行い、計測を継続することができた。 回収したデータの解析に遅れがあるものの、計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
PVグリーンシステム下で生育する植物の生育環境の計測を行い、発電と緑化が両立できる環境条件を明らかにする。そのためには、植物の生育状況の把握(写真による植被状況の把握、SPAD値や鮮度メータを利用した健全度の計測)を並行して行う予定である。 発電量に関して、昨年は7月から計測を開始したため、年間を通して、PVグリーンシステムの発電量にどのような変化が生じるのかを明らかにする。そのためには、これまでと同じ方法で発電量を計測し、蓄積されたデータと合わせて、パネル周辺温度との関連性を分析する予定である。 また、環境配慮特区へと成果を展開するため、GISを用いた屋上緑化可能面積の計測に着手する。候補地は決定済み(東京都千代田区、宮城県仙台市、茨城県水戸市)であることから、各種空間データと環境配慮特区となる条件を加味して、対象地を決定し、屋上緑化可能面積の計測に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果の一部を取りまとめ、公表するため、投稿論文・口頭発表を行う。そのため、成果発表に係る旅費、論文翻訳に係る費用(謝金)、学会・国際会議の参加登録料(その他)を支出する。 WOS後、冬芝(寒地性芝草)から夏芝(暖地性芝草)への生え変わり(トランジッション)の状況に合わせて、種子散布や施肥、薬剤散布を行う必要がある。そのため、それらに関する資材を購入する。 夏期には、パネル周辺環境の計測を実施するため、データ回収等実測調査を行う。そのため、前年度よりも長期日程を想定した旅費を支出する。データ解析の遅れを取り戻すため、アルバイト人員を雇うことも検討している。
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