研究課題/領域番号 |
24700779
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山田 泰行 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80531293)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 韓国 |
研究概要 |
予備調査の成果を「子育て看護師育成を目指す多重役割マップ(MRM)の実践」というタイトルで第5回日韓参加型産業安全保健トレーニングワークショップにて発表した。ここでは、看護師の両立支援のために多重役割マップを実施することの意義と、実施方法、予備調査を通して明らかになってきた実施にあたっての留意点について発表した。具体的には、実施時間は90分~120分を要すること、取り組みやすさに個人差があるため対面で行う必要があること、ワークそのものは楽しんでもらえる傾向にあることについて、実践事例を踏まえた成果発表を行った。さらに、このプレゼンテーションを通して、韓国の産業医と産業看護師の賛同が得られ、韓国順天郷大学亀尾病院との連携が可能になった。予備調査の実施から韓国との国際連携までの成果の一部は「労働の科学」誌に掲載された(「日本と韓国を繋ぐ参加型研修PAOTの実践」, 労働の科学, 第68巻, 4号, 37-41頁, 2013年)。調査参加者の看護師からは、女性看護師のみでなく男性看護師の子育てや職場での活躍にも焦点をあててほしいという要望をいただいた。まだ研究開始段階にも関わらず、多くの医療従事者や研究者が研究協力を申し出てくれたことは、平成24年度の研究実績が有意義かつ重要性の高いものであったことを裏付けているかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画の内容は(1)倫理審査申請、(2)多重役割マップの実施、(3)内省報告(ナラティブデータ)の蓄積、(4)ナラティブ・データの解析、という4側面である。ここまでを【研究1】とし、「看護師に多重役割マップを実施し、体験者の内省報告記述から介入効果に相当する表現を抽出し構造化すること」を目的とした調査を行った。 具体的には、平成24年度内に名古屋市立大学倫理審査委員会の承認を得た。7名の看護師を対象とした予備調査を行い、看護師に共通の役割構造と、多重役割マップ実施上の留意点について検討した。多重役割マップの実施にあたっては面接方式(1度に3~5名)で90分~120分を要することから、【研究1】の目標サンプルサイズである90名の達成には最長で平成26年度までかかる見通しであったが、50名(56%)の看護師に調査を実施することができた。彼女らについては(1)~(4)の研究計画内容が完了している。平成25年度以降の調査のためのコホート開拓も順調に進めることができた。東海地方の調査では愛知県内の1総合病院で予備調査を実施し、本調査に繋げることができた。関東の調査では、順天堂大学練馬病院と順天堂大学越谷病院を含む4総合病院で調査準備を進めており、そのうち3つの医療機関で調査を開始することができた。予備調査の成果を第5回日韓参加型産業安全保健トレーニングワークショップで発表したことにより、韓国の大学病院での調査が可能になったことは当初の研究計画以上の成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は研究計画に従い、【研究2】を実施する。【研究2】は、精力的に多重役割をこなす者の多重役割マップの特徴を明らかにするための、看護師2000名を対象とした質問紙調査である。【研究1】も目標サンプルサイズの90名を達成するまで継続的に実施していく(残り40名)。当初の想定以上にコホートの拡大が期待できることや、医療現場から調査実施のリクエストをいただいていることから、可能な限りサンプルサイズを拡大していく予定である。また、平成24年度の協力医療機関は大半が関東地域の総合病院であったことから、平成25年度は東海地域の医療機関における調査を増やしていくことで地域性のバイアスに対処していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
備品費の使用については、平成24年度に申請していたが購入を見送ったPCなどの資材を購入する予定である。国内旅費は関東地域の協力医療機関への移動と学会発表で使用する予定である。現在、人類働態学会、産業・組織心理学会、産業保健人間工学会、人間工学会等の参加・発表を予定している。海外旅費の使用に関しては、多重役割マップやそれを用いたグループダイナミクスの可能性について専門家の意見を収集するため、2013年8月にフロリダで開催されるThe 73rd Annual Meeting of the Academy of Managementに参加する予定である。人件費は、まとまったデータが得られ次第、データ入力のために執行する。調査謝礼は調査の進行に従い、【研究1】の参加者に2,000円、【研究2】の参加者に500円を支払っていく。印刷費は文献や英文校閲費に使用するが、協力医療機関用報告書の作成にあたっても使用していくものとする。
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