研究課題/領域番号 |
24700779
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山田 泰行 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80531293)
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キーワード | 社会系心理学 / 応用健康科学 / 看護管理 |
研究概要 |
平成25年度は愛知県内の総合病院(総看護師数125名)に調査を実施した。調査にあたっては研究代表者が医療機関内に常駐し、全看護師を対象に調査説明を行った。その結果、110名の看護師から同意を得ることに成功し、多重役割マップと質問票を回収した。平成24年度の調査とあわせると多重役割マップの有効データは140名を超え、研究1の目標水準である90名を大きく上回る成果をあげることに成功した。研究2(質問票調査)では目標有効データ数2,000名のうち、平成25年度内に150名を達成した。その中には看護業務と子育てに従事する看護師が数多く含まれていたことから、子育て看護師のポジティブ・ロールモデル確立を目的としている本研究にとって理想的な調査を実現することができたと考えられる。平成25年度の成果発表については、平成24年度内に調査が完了した助産師のデータを対象に行った。多重役割マップは「ポジティブ・スピルオーバー」、「ネガティブ・スピルオーバー」、「補償」という3つの現象のエピソードを収集するツールであるが、平成25年度は「ネガティブ・スピルオーバー」の集計結果を産業保健人間工学会第18回大会で発表した。「補償」の集計結果についてはProceedingにまとめ、年度末には平成26年度にポーランドで開催される第5回国際人間工学会に投稿した(「ポジティブ・スピルオーバー」の集計結果は平成24年度に発表済)。すなわち、助産師が仕事役割と子育て役割に従事する中で得た恩恵、直面した葛藤、葛藤が生じた際の対処行動についてのナラティブ・エビデンスをそれぞれまとめて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は「多重役割マップを実践し評価を得ることで介入ツールとしての有用性を検証すること(目的1)」と「多重役割マップの分析から精力的に多重役割をこなす者の特徴を明らかにすること(目的2)」であり、一連の研究成果を踏襲して「多重役割マップ実施マニュアル(看護師版)」を作成することがエンドポイントである。平成25年度までに収集したデータを概観すると、多重役割マップの評価を得るために設けた自由記述欄の記載が予想以上に少なかったことから、目的1の達成度はいまひとつであるが、臨床現場で活躍する子育て看護師の有効データを数多く得ることができたことから、目的2については達成水準とみなすことができる。さらに、平成24年度に実施した予備調査では看護師に多重役割マップを実施する際の留意点を整理するなど、「多重役割マップ実施マニュアル(看護師版)」のコンテンツが充実したものになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の前半は平成25年度内に終えることのできなかった研究2(質問票調査)を実施しつつ、研究1のデータを解析して論文作成に着手する。後半は医療機関報告書を作成しつつ、研究2のデータを解析して論文作成に着手する。年度末までには協力医療機関報告書と本研究のエンドポイントである「多重役割マップ実施マニュアル(看護師版)」を作成し、一連の研究成果をまとめていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究1の目標対象者数達成が平成25年度末となったため、平成25年度までに予定していた国際学会発表を延期したこと。平成25年度の質問票調査が平成26年度にまたがったため、調査参加者やデータ入力者への謝礼を執行できなかったこと。これに加え、平成26年度より研究代表者の所属機関が変わったことにより、データ保存およびデータ解析のための物品購入が遅れたことが次年度使用額が生じた主な理由である。 主な使用計画は次に示す通りである:目標対象者数2,000名(残り1,850名)の質問票調査を実現し、データ入力を行う。データ保存及び解析用のための物品購入を行う。年度末には報告書とマニュアルの作成を終えて印刷製本費を執行する。研究成果を国際学会で発表する。
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