研究課題/領域番号 |
24700780
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研究機関 | 東北生活文化大学 |
研究代表者 |
川又 勝子 東北生活文化大学, 家政学部, 講師 (50347910)
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キーワード | 型染め / 染型紙 / 工芸染色 / デジタル化処理 |
研究概要 |
仙台地方の染色特産品には、明治期から大正期にかけて栄えた常盤紺形染と、それ以降から昭和40年代にかけて当時の大量染色法である注染で染められた浴衣・手拭がある。これら仙台地方に特徴的な型染めについて調査を行い、染色に用いられた型紙の整理と電子保存を行うとともに、資料のデータベース化と型紙や染物の復刻再生を目的とした。 平成25年度は、名取屋染工場(仙台市青葉区)が所蔵する浴衣・手拭染色用型紙(注染型)のうち、第6~7型入れ箱の216枚について計測と保存状態等の調査を試み、それらと第5型入れ箱の未収録の型紙、計223枚については、フェイスアップスキャナを用いて文様の電子的保存を行った。当年度に調査対象とした注染型では、補修を要する型紙は8.8%と、これまでよりも少ない結果となった。そして、これらの電子画像を利用して型紙データベースの続刊である『仙台型染資料集VIII』(全86頁、資料掲載数223枚)を印刷製本する事ができた。注染型の内訳は、名入れ手拭80.9%、名入れ浴衣と名入れ以外の浴衣6.6%、その他(布巾等)12.5%であった。 一方で、電子保存した型紙文様の活用法についても引き続き検討したが、本年度は、昨年度複製した注染型紙と常盤紺型とを用いて、染色見本を作成した。常盤紺型については、防染糊についても検討し、常盤紺形染の特徴である両面防染の染色見本の試作も行い、概ね良好な結果が得られた。 また、これまでに収集した仙台型紙の文様を活用したデジタルテキスタイルデザインを大学の実習授業に取り上げた(汎用デザインソフトによる仙台型染め文様の手拭デザイン)。さらに、その成果を発表する展示会を開催(H25年11月13~20日、東北生活文化大学図書館ギャラリーにて)し、教育関係者・染色業者・デザイン関係者より好評を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
注染型紙文様の調査と電子保存については、概ね計画通りに進められた。前年度導入のフェイスアップスキャナの他に、それを操作するハイスペックパソコンを当年度導入できたことで、効率のよいスキャニングと画像加工が可能になったためと思われる。これらの電子画像を利用した型紙データベース・資料集作成も予定通り行うことができた。一方で、当年度は、型紙の寸法計測や破損状態の記録、データ入力などの調査補助をする研究協力者を十分確保できなかった。次年度は、協力者の人数を増やすなどして、より迅速な調査を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、注染型紙文様の電子保存を試みる。現在調査と電子保存を行っている注染型紙は、劣化の著しい物が約半数を占めている。今後、さらなる劣化が想定されるため、できるだけ早い段階で型紙文様の電子保存を完了させることを第一の目標とする。そのために、研究協力者の十分な確保と効率的な調査日程を組むことで、迅速に調査を行いたい。また、折れ曲がりやクリンプ、欠損などの劣化が著しい注染型紙の材料学的な保存については、これまでも検討を試みているが、有用な方法には至っていないため本年度も引き続き検討する。 一方で、常盤紺形染に関する資料についても民間等に保管されている未調査の資料があることが想定される。資料をできるだけ電子データ化できるように引き続き調査を行う。さらに、平成24年以降に見出した常盤紺形染の型紙(常盤紺型)7枚の電子保存データを活用した複製型紙を制作し、染見本も作成する。 これら仙台地方に特有な型染め資料についての調査結果をまとめるものとして、『仙台型染資料集IX』の刊行、デジタルデータベースの作成はこれまでどおり、引き続き行う。さらに、地域の衣生活文化としての仙台型染めの存在を広く周知するために、大学での実習授業に取り上げる他、本年度はワークショップを伴う作品展示会を開催するこことで、伝統文化に現代の技術・感性を加えた成果を公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料計測・調査にあたる研究協力者が予定通りに確保できなかったことと、ハイスペックパソコンの購入価格が予定していたよりも安価であったために、次年度使用額が発生した。 調査対象の資料は、劣化の著しい物がが多く、今後もさらなる劣化が想定されるため、できるだけ早い段階で型紙文様の電子保存を完了させたいと考えている。そのために、資料の整理分類・計測・デジタル化作業の補助に当たる研究協力者を十分に確保する。確保の方策については再検討する。また、これまで使用していたWindows XPパソコンが使用できなくなったため、研究協力者がデータ集計や画像保存に使用するパソコン機材を新たに補充する必要がある。効率的な調査日程の設定と、良好な調査環境を準備することで、迅速な調査を行いたい。
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