本研究は、小学生を対象とした防犯教育の現状を把握し、今後の防犯教育のあり方を検討していくことを目的としている。 本年度は、家庭での防犯教育の現状と学校での防犯教育に対する保護者のニーズを把握するため、アンケート調査およびワークショップを実施した。調査対象は、地域ぐるみで防犯に積極的な取組を行っている熊本市の小学校を選定した。 アンケート調査から、保護者が小学校に対する防犯教育に関するニーズとして、犯罪の危険に遭遇した時においてのより具体的な対処方法の指導、集団下校の実施などがあった。また、具体的な防犯教育内容として、状況を想定した体験型の学習や、ロールプレイング型の学習方法への要望がみられ、警察官による防犯教育に対しても一定の期待があることが判明した。家庭での防犯教育としては、学校での話題、近所での問題を話し合うなどの取組は多くみられたが、危険時の具体的な対処方法について家庭内で話し合う取組を頻繁に行っているとの回答は2割程度にとどまり、防犯ブザーの点検などはほとんど行われていないことが判明した。 アンケート調査の結果を踏まえ、保護者と防犯教育の対象となる小学生の意見を詳細に把握するため、ワークショップを実施した。保護者の間では防犯教育の現状と持続可能な地域の防犯活動の在り方を検討し、具体的な防犯教育の方法の確立とともに、既存の複数の地域主体による防犯活動を整理する必要があるとの認識を深めた。また、小学生の意見等から、実践的な体験型防犯教育により犯罪への恐怖感のみがいたずらに増幅されることを回避するためには、地域の見守り活動により地域に対する子どもの安心感の醸成が不可欠であり、体験型の防犯教育の前提として重要であることを認識した。 以上を踏まえ、体験型の防犯教育の具体的な手法を検討するとともに、家庭、学校でのそれぞれの役割について検討していく方針である。
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