研究課題/領域番号 |
24700792
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
高橋 美登梨 目白大学, 社会学部, 助教 (10507750)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 衣生活 / 手指の巧緻性 / 着脱動作 |
研究概要 |
今年度は、幼児を取り巻く衣生活の実態を明らかにするための質問紙の作成を主に行った。これまで被服分野では幼児を対象とした量的研究があまり行われてきていないため、質問紙を作成するにあたり、予備調査として仙台市内の幼稚園での観察調査および質問紙のプレテスト行った。予備調査の結果、以下のことが明らかになった。 ①幼児の観察調査:おおむね一人で着脱動作を行うことができ、中には脱いだ衣服をたたんで着替え入れの袋に入れるこどももいる。衣服の前後や靴の左右を確認する習慣はあるが、間違えて着用する場合もある。汗をかくと衣服が体にくっつき、一人で脱ぐのは困難である。 ②質問紙調査のプレテスト:調査項目について動作の習得状況については「○○が着られる」というよりも「裏返しに気づく」、「袖を通すことができる」など着脱のプロセスを聞かれたが答えやすいといった指摘があった。生活面に関する意見交換では、自立した衣生活を送ることの重要性は理解しているが、園生活の中で特別取り組んでいることはない、食べることに関しては親の関わり方が大きく影響していると感じている、ぬりえの筆圧が弱い、生活経験が乏しい、裸足になる(汚れること)に抵抗がある、といった意見が出た。 以上のことをもとに衣服の着脱を「生活動作のひとつ」と捉えて新たに質問紙を作成した。質問紙は1.衣生活の自立への取組み(着替えの場面、園生活で着用している衣服、着替えに対する援助の状況)、2.子どもの衣生活の自立に対する考え(衣生活の自立の教育的効果、園で援助する基本的な生活習慣、手指の巧緻性への関心)より構成した。質問紙の発送は新年度の開始に合わせて行うこととする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主な理由は、質問紙調査の作成に時間がかかったためである。この質問紙調査は、今後の研究の基礎資料とするため、質問項目の設定には多方面から助言をいただきながら行った。年度始めの予定では、8月の予備調査を行った後、9月末を目処に質問紙調査を発送することとしていた。しかしながら、予備調査の結果、生活動作の中でも衣生活に対する関心があまり高くないこと、さらに着脱動作の習得状況についても先行研究のように「○○が着られる」という質問では答えにくく着脱のプロセスを問うほうがよいことが明らかになったため、質問項目を大幅に見直すこととなった。当初は1.園生活の中で着脱動作と取り入れることの必要性、2.自立して着脱が行えることの効果、3.他の生活動作に比べた時の着脱動作の重要性の3つを質問項目の柱としていたが、1.現状を把握すること、2.保育者の意識を明らかにすることと構成を変更した。1.現状を把握することでは衣生活の自立の取組みとして着替えの場面、園生活で着用している衣服、着替えに対する援助の状況、2.保育者の意識では子どもの衣生活の自立に対する考えとして衣生活の自立の教育的効果、園で援助する基本的な生活習慣、手指の巧緻性への関心を回答してもらい、自由記述で手指の巧緻性の向上のために行っていることおよび子どもの手指の動作の現状に対する考えを回答してもらうこととした。質問紙の発送は新年度の開始に合わせて行えるよう印刷業者と準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は質問紙調査と幼児の観察調査を行う。 質問紙調査は、1次調査として23区内の幼稚園・保育園300園を無作為に抽出し、質問紙の郵送を行う。この質問紙に観察調査の協力願いも同封し、研究に協力できる場合には同意書を返送していただくこととした。質問紙の回収率を見て、質問紙が合計で500園となるように都内の幼稚園・保育園・子ども園を対象に追加調査を行う。この結果はいずれかの学会で年度内に発表する予定である。 質問紙調査の結果を受けて、観察調査を行う。観察調査の目的は1.手指の巧緻性の測定と2.着脱動作の観察である。着脱の一連の動作の習得状況と着脱を行う頻度の関連性を検証した後,手指の巧緻性が着脱動作に及ぼす影響を明らかにする。対象は、ほぼ全員が1年以上の園生活を送っている年長クラスとする。対象園は、観察調査に同意いただいた園より2~3園に依頼する予定である。調査においては学生アルバイトに補助を依頼する。幼児の手指の巧緻性の測定には、ひも結びテストやビーズ通しテストが有効であることが先行研究で報告されているが、ひも結びテストやビーズ通しテストの妥当性を改めて検証する。その後、着脱の一連の動作(衣服を脱ぐ→指定した衣服を着る→脱いだ衣服をたたむ)をビデオカメラで撮影する。画像を解析して①所要時間,②衣服の着方(着用状態),③脱いだ衣服のたたみ方の3項目について評価する。制服を取り入れる等,着脱場面の多い園と少ない園の比較を行い,着脱の経験が動作の習得に与える効果を検証する。さらに、着脱の習得状況と手指の巧緻性の関連も明らかにすることとする。なお、観察調査は平成25年度~26年度にかけて行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.観察調査のためにはビデオカメラ9台(1クラス3台×3クラス)と実験衣20着を購入する。実験衣は、園服を作っている業者に1着約2,000円で製作してもらう。サイズ、留め具の種類・大きさ・数等は質問紙調査、協力園への聞き取り調査により決定する。手指の巧緻性の測定には、ひも結びテスト用のひも、ビーズ通し用のビーズおよびテグスを用いる。ひもの太さ・長さ、ビーズの色・形等は予備実験を行ってから決定する。 2.観察調査では、記録の補助として学生アルバイトを雇う。1回の調査につき7~10名のアルバイト学生を予定している。 3.日本家政学会第65回大会(場所:昭和女子大学)、被服構成学部会夏期セミナー(場所:岡山)および春期セミナー(場所:未定)へ参加し、研究発表および情報交換を行う。 4.必要に応じて図書や論文を取り寄せる。
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