研究課題/領域番号 |
24700792
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
高橋 美登梨 目白大学, 社会学部, 客員研究員 (10507750)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 衣生活 / 着脱 / 集団保育 / 手指の巧緻性 |
研究実績の概要 |
1.集団保育における着脱の実態 平成26年1月~2月に東京都内の幼稚園・保育所の保育者を対象に着脱の実態等について質問紙による調査を行った結果を集計した(535園より回答:回収率41.2%)。保育者は幼児が着脱を習得することにより自立心が芽生える,自信がつくといった精神面の発達に効果的であると捉えていた。さらに,動作の習得には園での援助も必要と約6割程度が回答した。日常的に午睡時や登園・降園時に着脱を行っている園は約6割であり,着替えの習得は園服の利用目的のひとつでもあった。動作の習得状況は,3歳児では半そでに腕を通すなど大きな動作を習得し,5歳児ではほとんど援助の必要なく動作を行うといえる。微細運動能力について約6割が以前に比べて低下していると感じており,向上させる手段として着替えに着目しているとの記述も見られた。
2.着脱動作と微細運動能力の関連性の検討 10月~12月に東京都内の幼児園5歳児112名(A園57名、B園55名)を対象に着脱(体操服から通園服への着替え)、微細運動能力(ひも結びテスト・ビーズ通しテスト)、粗大運動能力(20m走・ボール投げ・立ち幅跳び)を測定した。現時点では、着脱よりボタンかけと微細運動能力よりひも結びテストの関連性(いずれも所要時間を測定)の検討まで進んでいる(A園)。ひも結びテストの所要時間を速い順に並べ、人数が同じようになるように上位群と下位群に分けた。ボタンの操作時間についてt検定を行った結果、上位群と下位群間が有意であったことからボタンのかけ操作の所要時間と微細運動能力には関連性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
着脱ははおる、はく等の全身の動作と留め具等の細かい操作によって行われる。したがって、粗大運動能力と微細運動能力によって行われる生活動作であるといえる。平成26年度は都内の幼稚園2園の協力を得て、着脱・微細運動能力・粗大運動能力を測定し、その関連性を検討することを主な目的とした。A園においてボタンかけとひも結びテストでは関連性が示唆されているが、B園ではA園ほど明確な結果は得られていない。そのため、達成度はやや遅れている。他の項目についても2園の結果が異なるものもあり、実験の条件設定での課題が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に改めて調査を行う予定である。以下の2点を検討課題としている ①対象者の検討 調査の対象年齢は幼稚園と保育所で自立の程度の差異がないこと,観察者の声かけの影響を受けないように保育者の援助がなくてもボタンの操作を行えることを重視して5歳児としたが,動作を習得できていたために個人差が少なかったと推察される。手指の巧緻性はボタンかけの習得時期にも関わることを考慮すると対象年齢を下げることも検討する必要がある。 ②調査内容の検討 手指の巧緻性は遊びを含めたすべての日常生活の中で培われると考える。今回の調査では量的データ(着衣動作とひも結びテストの所要時間)のみに着目したが,発達段階にある幼児の生活は質的にも捉える必要があると調査を実施する中で感じた。遊びへの取り組みや基本的生活習慣の習得状況等を担任や保護者に質問紙による調査を行い,量的には測定できない部分を補完する。量的データの測定方法についても,環境作りや実験衣の選定等において汎用性の手法の確立を目指す。量的データと質的データの両面から幼児の動作を捉える実験計画を立てる必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
着脱動作と手指の巧緻性の関連性について安定的なデータが得られていないため、実験条件を見直した上で追加での調査が必要と考えている。 得られた成果は学会等で発表するため、投稿のための費用や学会参加のための交通費が必要となる。
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次年度使用額の使用計画 |
・交通費等:学会参加のための交通費や論文投稿のための費用とする。 ・人件費・謝金:調査は2名1組になり、会場を5つに分けて行うため、1回の調査で10名のアルバイトが必要となる。日数は4日程度を予定している。
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