日本で高い漁獲量を誇るカツオ (Katsuwonus pelamis) は生食用の他、鰹節等へ加工され保存食として活用されているが、未だ魚体の40%は未利用部分が占めており、その廃棄コストは取扱い業者の負担となっている。従って、未利用部分の有効な利用法の提案や高付加価値化が強く望まれている。本研究では、未利用部分の一部である中骨と髄を対象とし、その食品科学的価値の追究を行った。カツオ髄の遊離アミノ酸分析、ならびに加水分解後のアミノ酸組成分析の結果、両分析において、アミノ酸関連物質であるタウリンの含量が高いことが判明した。また、髄中にはコラーゲンが豊富に含まれていることも判明した。カツオ中骨・髄からのアミノ基含有化合物の溶出挙動を調べたところ、煮沸時間15分で頭打ちの状態になることが判明した。しかし、その煮沸溶液中でのうま味に関連する核酸関連物質の濃度は低いものであった。カツオ中骨・髄抽出溶液の機能性の解明を目的として、in vitroでの抗酸化活性 (DPPHラジカル消去活性、スーパーオキシドアニオン消去活性)、抗肥満活性 (リパーゼ阻害活性)、高血圧予防効果 (アンジオテンシンI変換酵素 (ACE) 阻害活性) を調べた。しかしながら、いずれにおいても顕著に高い活性は認められなかった。以上のことから、カツオ中骨・髄抽出液そのものを食品素材として取り扱うことは現時点では難しいと判断した。今後は、髄中のコラーゲン分解物やタウリンの機能性に着目した研究を行うことで、新たな用途を見出すことができる可能性があるものと考えている。
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