研究課題/領域番号 |
24700804
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉崎 由美子 鹿児島大学, 農学部, 助教 (80452936)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 麹 / 香気成分 / 焼酎 |
研究概要 |
麹は,日本の清酒や焼酎といった伝統発酵酒類の製造に欠くことのできない原料である.本研究では,焼酎をモデルとして発酵食品の香りに麹由来の香気成分が及ぼす影響について明らかにすることを最終的な目的としている.本年度は全麹仕込み焼酎と麹の代替として酵素剤と蒸煮米を用いて製造した酵素仕込み焼酎の揮発成分についてガスクロマトグラフィー質量分析計 (GC-MS) を用いた解析を行った.両者の揮発成分量を比較した結果,酵素仕込み焼酎にはオフフレーバーとして知られるジメチルトリスルフィドが多く含まれていること,全麹仕込み焼酎には高い芳香を有するエステル類が豊富に含まれていることが分かった.またGC-MS/匂い嗅ぎ分析を行った結果,全麹仕込み焼酎から 29 個,酵素仕込み焼酎からは 21 個の匂いが検出された.全麹仕込み焼酎と酵素仕込み焼酎で共通の匂いは 20 個あり,そのうち 13 個について成分を同定することができた.13 個中 7 個はエステル類 (果実様,甘臭) であった.しかしながら,両焼酎でエステル類の匂い強度には大きな差はないことが分かり,焼酎中の主なエステル類は原料である米から作られることが考えられた.残り 6 個の匂いの成分は刺激臭や青草臭,漬物臭などの欠点臭と考えられる成分であり,そのうち 3 成分が酵素仕込み焼酎で高い匂い強度を示した.特有香気成分として全麹仕込み焼酎で 9 個の匂い,酵素仕込み焼酎で 1 個の匂いが検出された.その多くは成分の同定までには至らなかったが,紅茶やシソ,フライドポテトを連想させる香りなど独特の香りを有するものが多く存在した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験材料である麹を用いず酵素および蒸煮米によって作製した焼酎の作製には,想定していない発酵不良が認められ,酵素製剤の選定を改めて行うなど予想外の試行錯誤も必要であった.しかしながら,問題点が早めに明らかになったことで,その後の実験に影響をすることなく,かつよりよい実験材料を調製することが出来たと考えている.実験手法は,これまで私は食品が有する香気成分の分析に関する研究手法を中心に進めており,手法的に熟達しているためにおおむね順調に遂行できている.GC-MS分析自体には時間を要するが,想定の範囲内であり,概ね予想通りの結果が得られている.しかしながら,これから未同定化合物についてさらに研究を進めていく予定であることから,実験の進行も慎重に行っていくつもりである.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究により,麹を使用することで生成される香気成分の候補となる数種類の化合物を同定することができた.しかしながら,一方で候補成分であるにも関わらずGC-MSによる同定に至らない化合物も存在する.そこで今後は,候補である化合物について2通りの研究方向で実施していく. 一つ目は,同定できた成分に対して生成過程を明らかにしていく.まず始めに麹の作製を行う.その際に経時的にサンプリングを行い,冷凍保存により,各行程における麹を取得する.この時,麹を別々に4連で作製し,ロット間の誤差を最小限に留める工夫をする予定である.その後,作製した麹を用いて発酵を行い,麹作製時と同様に経時的にサンプリングを行う.作製した試料をGC-MSに供し,候補成分の増減について経時的変化を調べる. 二つ目は,未同定の候補成分に対しては同定を進めていく.未同定成分の同定は,GC-MSに供するヘッドスペースガスの供給量を増加することで行う.同定が不可能で合った場合は,樹脂による固相抽出と加熱脱着装置を用いた異なる濃縮方法を用いて行っていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は,前年度と同様に主にGC-MS分析に必要であるガスや消耗品の購入に充てる.GC-MSの主な分析は,前年度に終了しているが,さらに詳細な解析に移行したために,分析回数はほぼ同程度を予定している.またこれら分析結果により得られた成果を基に,国内における学会発表に2度出席する.このとき,成果発表と同時に研究周辺情報の収集を行う.また成果を国外の雑誌に投稿する予定であり,英文校閲費や投稿料など必要に応じて使用する.
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