研究課題
本研究では,焼酎をモデルとして日本の伝統的な食材である麹が食品の香気に及ぼす影響とそれに寄与する香気成分の同定,生成メカニズムを明らかにすることを目的としている.これまでに麹を用いて製造した焼酎(全麹仕込み焼酎)と麹の代替として蒸し米と酵素剤を用いて製造した焼酎(酵素仕込み焼酎)について官能評価およびGC-MSによる分析を進め,麹を用いることでオフフレーバー(欠点臭)であるジメチルトリスルフィドが減少し,イソバレルアルデヒドやエステル類(果実様,甘臭)の成分が増加していることを明らかにした.そこで本年度は,GC-MS/匂い嗅ぎ分析と希釈分析法を組み合わせて,検出された匂いピークの強度を調べた.その結果,酵素仕込み焼酎では22個の匂いピークが,全麹仕込み焼酎では32個の匂いピークが検出された.そのうち化合物が同定されたピークは,酵素仕込み焼酎が17個,全麹仕込み焼酎が22個であった.酵素仕込み焼酎において匂い強度の高い成分としてヘキサナール等が,全麹仕込み焼酎において匂い強度の高い成分として多数のエステル類 (6成分) があり,これらの結果はGC-MSの結果と一致していた.またMSによる化合物同定に至らない成分も匂いが検出されるピークもあった.これらのピークは,特に全麹仕込み焼酎に多く検出された.未同定匂いピークは,匂い強度は高くない (FD=1~9) が,紅茶,フライドポテト,ラベンダー,ソーダなど,特徴的な香りをもつ匂いピークであった.これらのことから麹に由来する焼酎の香気成分としてイソバレルアルデヒドがあり,また麹自体が発酵させることでエステル類の形成に影響を与えていることが示唆された.
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日本醸造協会誌
巻: 110 ページ: 170-178
PeerJ
巻: PeerJ 2 ページ: peerj.540
10.7717/peerj.540