• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

毒素型食中毒に対する植物成分の制御機構の解明とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 24700806
研究機関静岡県立大学

研究代表者

島村 裕子  静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (60452025)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード黄色ブドウ球菌 / ブドウ球菌エンテロトキシンA / ポリフェノール
研究概要

【方法】植物食品の熱水および溶媒抽出物88試料、植物食品由来のポリフェノール類32試料、計120試料を試験に供した。抗菌活性を示さない試料の濃度を決定するために、各試料における抗菌活性について液体希釈法を用いて調べた。次に、決定した濃度の試料を添加した培地で黄色ブドウ球菌staphylococcal enterotoxin A (SEA) 産生株を培養し、SEAをWestern blotで定量した (一次スクリーニング)。一次スクリーニングで活性が認められた試料について、SEA分子と試料との結合親和性をWestern blotによって調べた (二次スクリーニング)。さらに、二次スクリーニングによりSEA分子と結合親和性を有した試料については、マウス脾臓細胞を用いて毒素活性阻害能を、SEAタンパク質のバンド強度が変化しなかったSEA分子と結合親和性が弱い試料については、SEA遺伝子発現への影響をリアルタイムRT-PCR法により調べた。
【結果】抗菌活性を示さない濃度の試料を添加した培地で黄色ブドウ球菌SEA産生株を培養し、SEAをWestern blotで定量した結果、用いた120試料中25試料においてSEAのバンド強度の減弱または消失が認められた。これら25試料について、SEA分子と試料との結合親和性をWestern blot解析によって調べた結果、23試料でSEAと結合親和性を有する可能性が示唆された。これら23試料にコリラギンおよびオイゲニンを加えた計25試料について、毒素活性阻害能を調べた結果、全ての試料がSEAの毒素活性を有意に抑制した。また、アップルポリフェノール、EGCgおよびメチル化カテキンについて、SEA遺伝子発現への影響をリアルタイムRT-PCR法により調べた結果、いずれの試料においてもSEA遺伝子発現の抑制が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度中に、同定した毒素産生抑制成分及び毒素活性阻害成分に共通する構造について探索する予定であったが、予想以上に多くの植物食品抽出物で効果が認められたため、一部の抽出物で成分の同定まで至らなかった。今後、毒素産生抑制及び毒素活性阻害効果のあった植物食品抽出物について、分画・精製し、効果のあるポリフェノールの構造を明らかにした後、毒素産生抑制成分及び毒素活性阻害成分に共通する構造について検討を行う予定である。

今後の研究の推進方策

本研究より、食用、飲用習慣に裏付けられた安全性の高い植物食品および植物由来ポリフェノール類は、食中毒菌の毒素活性を阻害する、または毒素の産生を抑制するという、新たな作用を有する可能性が示唆された。今後、これらの活性物質による毒素活性阻害能および毒素産生抑制能について、その作用機序を明らかにすることで、新たな食中毒制御法が開発されることが期待される。そこで、その作用機序を明らかにするために、主に以下の3つについて研究を進めていく予定である。
①ポリフェノール類とSEAが結合しているのか確認する (HPLC法)。
②ポリフェノール類とSEAが結合していることが毒素活性抑制効果につながっているのか確かめる (マウス脾臓細胞を用いた細胞生存性試験)。
③ポリフェノール類とSEAが結合している場合、SEAの催吐およびスーパー抗原活性に関係する領域に特異的に結合する抗体を作成し、結合部位を明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

毒素産生抑制及び毒素活性阻害効果が認められた抽出物について、随時、活性成分の最小添加量や活性成分のpH安定性・熱安定性等の評価を行うため、インキュベーターとpHメーターを購入する予定であった。しかし、予想以上に多くの植物食品抽出物で効果が認められたため、先に活性成分を同定する方が研究の効率が良いと考え、昨年度は、活性成分の分画・精製を中心に研究を進めた。そのため、本年度、昨年購入予定であったインキュベーターとpHメーターを購入し、毒素産生抑制成分及び毒素活性阻害成分の評価を行う際に使用する予定である。
また、本年度は、得られた活性成分とSEAの相互作用を分子間相互作用解析装置 (QCM) を用いて測定し、その作用機序について明らかにする予定であるが、QCMではSEAとポリフェノールの結合親和性を高感度に測定することが困難であることがわかった。そこで、Biacoreを用いて、SEAとポリフェノールの生物物理学的相互作用解析を行うことを検討している。そのため、研究費の一部は、Biacoreの消耗品費等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 食中毒菌の毒素産生および活性を抑制する植物食品の探索2013

    • 著者名/発表者名
      青木菜摘,島村裕子,田中隆,村田容常,増田修一
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130324-28
  • [学会発表] Screening of plant extracts for inhibitory effects on the production and biological activity of bacterial toxins.2012

    • 著者名/発表者名
      Natsumi Aoki, Yuko Shimamura, Takashi Tanaka, Masatsune Murata, and Shuichi Masuda
    • 学会等名
      The 1st international conference on pharma and food
    • 発表場所
      Shizuoka
    • 年月日
      20121115-20121116
  • [図書] 食に関する助成研究調査報告書 No.25, 79-872012

    • 著者名/発表者名
      島村 裕子, 増田 修一
    • 総ページ数
      110
    • 出版者
      公益財団法人 すかいらーくフードサイエンス研究所

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi