研究課題
本研究では,食品タンパク質酵素分解物を材料とし,分画による乳化安定性の向上を目的とし,ペプチド分画物のもつ乳化安定性を評価・検討した.さらに、ペプチド分画物を乳化剤として用いることで得られる酸化抑制効果についても検討を行った.10 %タンパク質分解物溶液を遠心分離し,上清を等電点または極性について分画を行った.ペプチドの分画には,水のみを溶媒とする自己等電点電気泳動(Autofocusing)装置,および分取用逆相クロマトグラフィーを用いた.得られた画分を凍結乾燥し以下の実験に用いた.ペプチド画分を乳化剤として全体の1%となるよう添加し,エマルションを調製した.得られたエマルション中の油滴の平均粒径,粒径分布,ゼータ電位の測定,目視での観測によってペプチド画分の乳化安定性を評価した.また、上記の実験で乳化安定性を示したペプチド画分を用い、O/Wエマルション中での酸化抑制能について分析を行った.比較にはモノ脂肪酸エステル系乳化剤を同量添加し乳化したエマルションを用いた.酸化抑制能はチオバルビツール酸反応生成物(TBARS)分析法により過酸化脂質分解物であるマロンジアルデヒド(MDA)の生成を調べた.酸化はAAPHにより惹起した.試験期間は七日間とし室温下で保存した.分画前のペプチドでは安定なエマルションを得ることはできなかったが,分画後のペプチド群を添加することで,比較的安定なエマルションが得られた.これらの一つの要因として界面張力の低さが考えられる.また、モノ脂肪酸エステル系乳化剤で乳化した場合と比べ酸化が抑制された. 本研究において、ペプチドを分画することにより乳化安定性が比較的高くエマルション中の油滴の酸化を効果的に抑制する食品に応用可能なペプチドを調製することができた. 以上の結果はペプチド系乳化剤の有用性を示唆する.
2: おおむね順調に進展している
食品タンパク質の酵素分解物をAutofocusing 法およびAmberchrome を用いた調製用逆相クロマトグラフィーにより分画し、等電点と疎水性の異なる画分を調製した。油脂と水に各画分を加え、モデル乳化食品を作成し、油滴サイズ、ζ電位、濁度等を測定し、乳化力及び乳化安定性を評価した。さらにモデル乳化食品中での酸化抑制効果についても分析を行った。これらは当初の計画通り順調に進展している。また、ペプチド画分をマヨネーズ等に添加し、冷蔵、室温で一定時間保存後、食品中での抗酸化能を評価中である。その他についても,当初の計画通り順調に進展している。
平成24年度の結果から得られた乳化安定性および抗酸化性を持つペプチド画分を用い、これら画分の乳化食品モデルおよび実際の乳化食品中での抗酸化活性メカニズムについて検討する。具体的には、ヒドロキシラジカル消去能、ペルオキシドラジカル消去能・フェントン反応の阻害、キレート作用、DPPHラジカル消去能を測定する。そして、いずれの活性が食品中での抗酸化能と相関するかを明らかにすることで食品中での抗酸化メカニズムを明らかにする。さらに食品中の脂質の1・2 次酸化物の検出を行い、ペプチド画分がどの酸化過程を抑制しているかを明らかにする。
該当なし
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