研究概要 |
平成25年度は食品タンパク質酵素分解物を出発材料とし, 疎水性に基づくペプチド分画物の乳化安定性に及ぼす等電点の影響を検討することを目的とした. 出発試料は,大豆タンパク質分解物,グルテンタンパク質分解物,カゼインタンパク質酵素分解物とし,分画には分取用逆相クロマトグラフィーを用いた.アミノ酸ごとの疎水性度に基づき,4画分にまとめ,凍結乾燥後,粉末試料として実験に用いた.ペプチド画分(1%・0.2%)を含むリン酸緩衝液(pH 7.0)とコーン油(5%)を用い乳化させた.得られたエマルションを室温下で静置し,分離・凝集を観察した.また各タンパク質酵素分解物の疎水性画分について,Autofocusing装置を用いた等電点電気泳動法により再分画を行い,画分に含まれるペプチドの等電点分布を調べた.さらに,大豆タンパク質分解物の疎水性画分を再分画したものを用い,水相のpH条件を弱酸・弱塩基性に変え乳化試験を行った. いずれのタンパク質分解物も疎水性画分で高い乳化安定性を示し,出発材料により乳化安定性は大きく異なった.特に大豆タンパク質分解物の疎水性画分において安定なエマルションが調製でき,1週間程度乳化状態が維持された.また, 大豆タンパク質分解物の疎水性画分の再分画物を乳化試験に用いた結果,酸性環境でも安定なエマルションが調製できた.タンパク質分解物の乳化安定性には,等電点より疎水性の方が寄与が大きい可能性が示唆された.
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