近年、脂質異常症が増加傾向にあり、その予防に効果的な大豆食品、特に摂取容易な豆乳に期待が寄せられている。大豆には機能性因子である大豆たんぱく質、イソフラボンが含まれ、脂質代謝改善作用を示すことが報告されている。申請者らは昨年度の結果より、大豆たんぱく質の共存時にアグリコン割合の高いイソフラボンを含む乳酸発酵豆乳は脂質代謝改善作用を促進すると推定した。そのため本年度は大豆たんぱく質共存時にイソフラボンのアグリコン割合の増加が脂質代謝に与える影響をさらに詳しく調べた。従来から使用しているイソフラボンをアグリコンに変換する能力の高い乳酸菌 Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii TUA4408L で発酵させた乳酸発酵豆乳と、同じ菌株でイソフラボンをアグリコンに変換する能力の低い乳酸菌、Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii TUA4404Lで発酵させた乳酸発酵豆乳を作製し、乳酸発酵豆乳中のイソフラボンのアグリコン割合が高脂肪・高コレステロール食投与ラットの肝臓脂質代謝に及ぼす影響を比較した。 2種類の乳酸発酵豆乳はどちらも血中脂質上昇抑制作用と肝臓脂質蓄積抑制作用を示したが、その作用はイソフラボンのアグリコン割合の高い乳酸発酵豆乳のほうが強かった。そのため乳酸発酵豆乳の脂質代謝改善効果はイソフラボンのアグリコン割合が影響していると推定された。 またヒト肝ガン由来HepG2細胞を用いてコレステロールの異化代謝に関わるCyp7a1遺伝子の発現に及ぼすイソフラボン影響を検討した。昨年度はダイゼインとゲニステインによるCyp7a1の発現促進作用を認めたので、本年度はエクオールについて検討し、ダイゼインやゲニステインよりも低濃度でCyp7a1遺伝子の発現を増加させることを認めた。
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