研究課題/領域番号 |
24700814
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 武庫川女子大学短期大学部 |
研究代表者 |
宮本 有香 武庫川女子大学短期大学部, 食生活学科, 講師 (70399252)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | チイルラジカル / ビタミンC / dough / 品質改良機構 / タンパク質 |
研究概要 |
平成24年度は、パンの品質改良剤として幅広く用いられているビタミンC(以下AsA-Na)の品質改良機構に、かまぼこの品質改良機構のようなスーパーオキシドアニオンラジカルが関与する系が成り立つか否か、すなわち、パン生地製造時のdough中にでもスーパーオキシドアニオンラジカルが発生しているか否かを検討した。その結果、混捏後、30℃ねかし状態(発酵中)に、明かなスーパーオキシドアニオンラジカルの発生が認められた。すなわち、AsA-Naのパン品質改良機構には、従来のGSHが介するSS-SH基交換反応による系以外にも品質改良機構を引き起こす系が存在する可能性が見いだされた。さらに、エリソルビン酸ナトリウムを用いても同様にスーパーオキシドアニオンラジカルの発生が認められたことから、AsA-Naだけでなくその異性体でも同様の効果が認められることが明らかとなった。 この品質改良機構を詳しく調べるために、焼成後のローフボリューム(膨張率)への影響およびドウの物性について検討を行った。その結果、焼成試験では、10ppm AsA-Na添加及び、10ppm エリソルビン酸添加で膨張率に有意な増加が認められた(p<0.05)。しかし、80ppmまでの添加量増加に対し、AsA-Naでは膨張率が減少傾向を示し、エリソルビン酸ではわずかな上昇傾向を示した。物性測定では、10ppm AsA-Na添加及び、10ppmエリソルビン酸添加により粘弾性が持続し、膨張率同様に改良剤添加量増加に伴い、粘弾性も影響を受けていた。すなわち、AsA及びエリソルビン酸は共にパン製造において品質改良効果をもたらすが、その添加量はそれぞれ異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、ビタミンC(以下AsA-Na)のパン品質改良機構に、スーパーオキシドアニオンラジカルが関与する系が存在することを明らかにし、さらに、AsA-Naだけでなく、その異性体であるエリソルビン酸を添加しても、同様に品質改良効果が起きる可能性を明らかにした。さらに、焼成後の膨張率より、AsA-Naとエリソルビン酸によるパンの品質改良機構には、その添加量に違いがある可能性が示唆された。 上記の点について、AsA-Naおよびエリソルビン酸によりパンの品質改良が起きる可能性が示唆されたことから、平成24年度はほぼ計画通りの進展ができていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、AsA-Naとエリソルビン酸によるパンの品質改良機構には、品質改良機構を引き起こす添加量に差がある可能性が示唆されたことから、平成25年度は、それぞれの改良剤にについて、品質改良機構を明確に引き起こす最適濃度を突き止め、その品質改良効果を、膨張率およびdoughの物性面から明らかにする。 また、品質改良効果が起きている際のタンパク質の状態を詳細に調べるため、電子顕微鏡によるグルテン骨格の観察、比較や、doughの状態をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分析することで、SS結合による重合体形成の有無などについても調べ、スーパーオキシドアニオンラジカルが与える影響をより詳細に調べる。 さらに、イースト等その他の副材料が与える影響もしくは、発酵を有しない無発酵パンの場合についても、同様の品質改良効果が得られるかなどの検討を行うことで、より効率的な品質改良剤の利用なども併せて検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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