研究実績の概要 |
代表的な品質改良剤であるアスコルビン酸(L-AsA)より発生するスーパーオキシドアニオンラジカルが、パンの品質改良効果に関与するか否かの検討を行った。L-AsA以外のスーパーオキシドアニオンラジカル発生源として、L-AsA異性体であるエリソルビン酸(D-AsA)、リボフラビン(Rf)を用い、同様の検討を行った。改良効果の有無は、ドウの物性および焼成後の膨張率で効果を評価した。こだまイースト(L-AsA無添加)を使用した改良剤添加の焼成試験では、10ppm L-AsA添加で膨張率は102.4±3.3%を示し、有意な膨化は認められなかった。しかし、10ppm D-AsA添加では107.3±1.2%と有意な膨化(p<0.01)が認められ、同濃度添加において、D-AsAの方がより品質改良効果をもたらす可能性が明らかとなった。他の添加濃度(20、40、59、80ppm)においてもD-AsA添加パンで品質改良効果を認めた。 ニトロブルーテトラゾリウム発色法を用いたL-AsA及びD-AsAのスーパーオキシドアニオンラジカル発生量定量では、1,000ppm濃度でD-AsAがL-AsAの2.8倍量とD-AsAのスーパーオキシドアニオンラジカル発生量が有意に高値を示した(p<0.01)。すなわち、D-AsA添加パンが高い膨張率を示したのは、この発生量の差に起因すると考えられた。 350ppm Rfを用いた焼成試験では、光照射を行い調製したドウで107.7±6.0% (p<0.01)と高い膨張率を示した。さらに、350ppm Rfのスーパーオキシドアニオンラジカル発生量は、1,000ppm L-AsAの5.2倍量、1,000ppm D-AsAの1.9倍量と有意な高い発生量が認められた(p<0.01)。すなわち、スーパーオキシドアニオンラジカル発生量は、L-AsA、D-AsA、Rfの順で高く、これは焼成試験による膨張率増加の順と一致していることから、パンの品質改良効果にはスーパーオキシドアニオンラジカルの存在が大きく関与していることが強く示唆された。
|