研究課題/領域番号 |
24700817
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
伊藤 裕才 国立医薬品食品衛生研究所, 食品添加物部, 主任研究官 (40435706)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
スルメイカ外皮試料は水産加工会社より分譲されたものを用いた。外皮をアセトンで洗浄後、塩酸/メタノール溶液に浸して色素の抽出を行った。抽出液を中和した結果、赤紫色の色素が沈殿し黄色の上澄み液が残った。上澄み液を逆相UPLC/TOF-MSで分析した結果2つの黄色色素が確認され、極大吸収波長および精密質量から、xanthommatinおよびdecarboxyxanthommatinであることが示唆された。上澄み液はアスコルビン酸の添加で赤色へと変化し、xanthommatin類の性質を示した。沈殿した赤紫色素は、中性の水および有機溶媒に溶解せず、塩酸を添加した酸性アルコール溶液にのみ溶解し、逆相HPLCで溶出することができなかった。これらの結果から、沈殿した赤紫色素は強塩基性の化合物であることが示唆された。 次に陽イオン交換樹脂を用いて抽出液の分画を行った。陽イオン交換固相カートリッジに抽出液を負荷し、25%アンモニア水/メタノール溶液で赤色色素を溶出した。この赤色素はで迅速に黄色色素へと変化した。続いて水酸化ナトリウム水溶液で褐紫色の色素が溶出された。溶出液をC18固相カートリッジに負荷し洗浄後、塩酸/メタノール溶液で溶出させた。溶出液は鮮やかな紫色を呈した。この紫色色素も上記同様に中性溶媒に不溶であり、逆相HPLCで溶出することができなかった。紫色素は塩酸メタノール溶液中で安定であり、アスコルビン酸の添加による色調の変化は観測されなかった。 最後にイオンペア試薬を添加した移動相による逆相HPLCで抽出液中を分析した。その結果、450nmから530nm近辺までの様々な極大吸収を持つ複数の色素が溶出された。 これらの結果から、スルメイカ外皮の色素は黄色から紫色までの複数の色素成分で構成され、さらに色素成分はxanthommatin類を含む強塩基性の化合物であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・最大の障壁であった不溶性色素のHPLC分析法を確立できた。 ・黄色~赤色の色素についてxanthommatin類であると同定することができた。 ・未知の紫色色素の精製方法が確立された。 本年度の成果は全てが新しい知見である。 当初の計画であった全ての色素構造の同定には至らなかったが、イカ色素の解明および添加物としての実用化にむけた大きな進歩であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
・主要色素の同定を行う。特に新規色素と考えられる紫色素の構造を明らかにしたい。 ・色素の定量方法を確立する。 ・添加物としての実用化を目指して色素の簡便な精製方法および安定な保存方法を確立する。すでに酸性条件下で安定であることを確認している。 ・色素のたんぱく質への染色力を量る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究試薬購入等の物品費として使用する。
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