研究課題
平成25年度は、樹立細胞系であるヒト白血球細胞を用い、ビタミンCによる免疫応答活性化の評価を検討した。免疫応答のなかでもとくに中心的役割を果たす白血球細胞に着目し、ヒト白血球細胞に対してビタミンCを負荷させることにより、ヒト白血球細胞の増殖および分化程度を詳細に解析した。ヒト白血球細胞の増殖については、細胞内に取り込まれて色素を生じる〔3-(4, 5-ジメチル-チアゾール-2-イル)-2, 5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド〕(MTT)アッセイ法を用いて評価した。また、ヒト白血球細胞の分化程度については、免疫細胞の表面に存在する表面抗原を指標とし、フローサイトメーターにより検出して、評価した。その結果、ヒト白血球細胞へ負荷したビタミンCの濃度により(一部ではビタミンC濃度依存的に)、白血球細胞の増殖割合が変化することが示された。また、表面抗原を指標とした免疫細胞の存在割合についても、負荷したビタミンCの影響を受けることが明らかとなった。これらの過程は必ずしも負荷したビタミンC濃度依存的に認められず、今回行った実験において認められたヒト白血球細胞の増殖・分化における変化の要因は、ビタミンCのもつ様々な化学的特性、ビタミンCとその他の物質との相互作用といった、種々の要因による可能性が想定された。しかし、ここまでの段階では、どのようなメカニズムによって、ビタミンCがヒト白血病細胞の増殖および分化に変化をもたらすかについての明確な情報は得られていない。次年度では、このような研究経過を踏まえ、ビタミンCの濃度依存的に認められる変化とその範囲を明確にし、免疫応答におけるビタミンCのより詳細な分子メカニズムの解明を目指す。
3: やや遅れている
本年度は、樹立細胞系を用いて、ヒト白血球細胞に対するビタミンCの影響を詳細に検討してきた。しかし、実験に使用している樹立細胞系であるヒト白血球細胞の増殖程度が一定でなく、増殖に時間を要する場合がある。また、サイトカインの分泌レベルなどは継時的に変化することから、実験結果の再現性が十分に取れないものも多かった。そのため、実験試料の収集や解析結果の検証に時間を要したことが大きい。
これまで実施してきた樹立細胞系における影響が生体レベルでも確認できるかを検討するため、動物組織を用いてビタミンC負荷による免疫応答の重要因子の変化を解析する。イメージング技術を用いることにより、より局所的な変化をターゲットとする。また、ヒト白血球細胞において認められたビタミンCの濃度依存的な変化とその範囲を明確にし、免疫応答におけるビタミンCのより詳細な分子メカニズムの解明を目指す予定である。
実験に用いている樹立細胞系(白血球細胞)の増殖・分化が安定せず、その条件検討に時間を要したため、当初の実験計画より実施内容にやや遅れが生じた。そのため、当初の使用予定であった研究費の一部は使用せず、繰り越すこととした。当初の研究計画に加え、免疫過程で重要な因子の活性測定を同時並行のかたちで進める予定である。
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