研究課題/領域番号 |
24700823
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
太田 明雄 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (10324104)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | リポソーム / カゼイン / 抗酸化物質 |
研究概要 |
栄養補助食品(NC)の高機能化を最終目的に掲げ、NC成分であり、かつそれ自身が自己組織化してNCのキャリアとなりうる、カゼインミセル、ならびにレシチンリポソームに着目し、それらのハイブリッド化とNCキャリアとしての有用性を明らかにすることを目的に研究を行った。 リポソームはDPPCにより作製し、従来の方法に従い100nmのサイズに調整を行った。カゼインについては当初はκ-カゼインを用いる予定であったが、今回入手した牛乳由来のカゼインナトリウム塩の単分散性が比較的優れていたため、こちらを利用した。カゼインミセルのサイズは、DLS測定とAFM観察を用いてカゼイン濃度とカルシウム濃度の観点から検討したところ、カルシウム濃度が10mM以下では、20nmのサブミセルとして存在できることが分かった。 次にNC可溶化物として、抗酸化作用を有するポリフェノールの一種であるゲニステインを選び、カゼインミセルへの可溶化量を検討した。今回利用したカゼインミセルの臨界会合濃度は0.5μMと見積もられたが、ゲニステインの可溶化量はこの臨界濃度を境にその増加率が減少した。このことからゲニステインはカゼインミセルの表面に結合する形で可溶化されているものと考えられる。また現在、カゼインミセルに可溶化されたゲニステインの抗酸化能力について、DPPHのラジカル消去能から測定を行っているところである。 更にリポソームとカゼインミセルとのハイブリッド化については、リポソームにリン酸塩アニオン型脂質を混合させることで、カルシウムイオンを介したカゼインとの相互作用を利用することを検討した。表面電位測定や限外ろ過を用いた吸着量の測定から一部のカゼインがリポソームに結合することが分かった。またcryo-TEMによる直接観察からも、同じくリポソーム表面に結合したカゼインミセルの存在を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、初年度に、(1)リポソームとカゼインミセルのサイズ制御、(2)リポソームとカゼインミセルへの各種ニュートラシューティカルズの可溶化量の決定、(3)リポソームとカゼインミセルとのハイブリッド体の調製、の3項目の達成を目指していた。(1)については概ね計画通り達成されている。(2)については、現在カゼインミセルへの脂溶性NCであるゲニステインの可溶化量の決定のみ達成された。しかしながら、リポソームを用いた水溶性NCの検討にはまだ至っていない。一方で可溶化されたNCの抗酸化作用については、次年度に計画されていたが、この部分については既に初年度から取り組みを開始できている。(3)については当初の計画とは異なり、リン脂質とカゼインがそれぞれに有するリン酸基をカルシウムイオンを介して結合させる方法を検討した。吸着量の測定やTEM観察から確かに一部のカゼインミセルがリポソームに結合したことを確認できたが、多くのカゼインミセルが遊離の状態で存在しており、リポソームとカゼインとの相互作用を更に強める方策が必要である。 このように一部には計画通りの成果を挙げることができていない部分も存在するものの、当初の計画に従い、概ね実行できている。よって現在までの達成度としては、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、次年度はカゼインーリポソームのハイブリッドキャリアに可溶化された、ニュートラシューティカルズの機能性に対して解明を進める予定となっている。よって計画通りに研究を遂行する予定である。ただし、初年度のうちに、カゼインに可溶化されたゲニステインのラジカル消去能の評価方法を検討を行ったところ、カゼイン自体の影響の評価方法に少し問題があることが分かった。まずはこの点を中心に取り組む予定である。また、初年度の期間において、十分な成果が挙げられていない項目については、再度検討を繰返し、速やかに達成させることが必要である。具体的には、リポソームとカゼインとのハイブリット化の方法を、アシル化ペプチドを介する方法や、カゼイン表面に脂肪鎖を化学的に就職させる方法などを検討したい。更には次年度が研究の最終年度にあたることから、研究内容をまとめ、成果の公開を積極的に行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画において、大きく変更が必要になった事柄は存在しない。よって当初の計画通り研究費を利用する予定である。具体的には研究遂行のための消耗品、謝金に対して主に執行し、また研究成果の公表のための学会活動参加のための旅費などに使用する予定である。
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