研究課題
我々の研究室では、膵β細胞量におけるエピジェネティクス制御機構の研究を行っている。本研究計画では、食事による栄養素、特にアミノ酸がエピジェネティクス制御を介して、膵β細胞量にどのような影響を及ぼしているかについて検討を行っている。これまでの報告において、アミノ酸がmTORC1活性を亢進させることが知られており、血中アミノ酸濃度を上げることによって膵β細胞量が増大することが予想された。しかしながら我々の検討では、高脂肪食などの食餌を与えることによって血中や肝臓内のアミノ酸濃度が上昇しても、インスリン生合成が必要な状態においては、膵島内のアミノ酸濃度は逆に低下することが明らかとなった。これは膵β細胞において大量に合成されるインスリン生合成にアミノ酸が供給されるためと考えられた。またそのような状態においてはインスリン遺伝子の転写誘導も必要であることから、HDACの発現が低下することによってヒストンアセチル化を促しているものと考えられた。膵島内アミノ酸濃度の低下はGCN2を活性化することにより、膵β細胞におけるmTORC1活性を調節することを明らかとした。しかしながらアミノ酸によるエピジェネティクス制御の変化が、直接膵β細胞量に影響しているかについては確認することができなかった。膵島におけるアミノ酸濃度、およびヒストン修飾酵素の発現量は、他の組織とは大きく異なっていることから、固有の制御機構が働いていることが予想される。今後はエピジェネティクス修飾酵素のノックアウトマウスを解析することにより、膵β細胞特異的なエピジェネティクス制御について検討を進めたい。
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Diabetes
巻: 未定 ページ: 未定
10.2337/db13-0970
巻: 62 ページ: 2266-2277
10.2337/db12-1701