研究実績の概要 |
本研究ではカルノシン酸が精神的なストレスによるがん進行に与える影響を明らかにすることを目的とし、検討をおこなった。その結果、以下のことが明らかになった。 まず、ストレスホルモン刺激がない条件で、カルノシン酸(25, 50 μM)は卵巣腫瘍細胞の増殖を濃度依存的に有意に抑制した。カルノシン酸と同様にローズマリーの成分であるカルノソール、ロスマリン酸、ミルセンについて、卵巣腫瘍細胞の増殖に与える影響をみると、カルノソールはカルノシン酸と同様に有意な抑制効果を示したが、ロスマリン酸、ミルセンは抑制効果はみられなかった。 次に、ストレスホルモン刺激を与えた条件で、カルノシン酸(10, 50 μM)はノルエピネフリン添加により促進された卵巣腫瘍細胞の増殖を抑制した。また、ノルエピネフリン添加で卵巣腫瘍細胞のVEGFの発現が増大することが報告されているが、カルノシン酸はこの増大も遺伝子及びタンパク質レベルで抑制した。ノルエピネフリンはβ受容体に作用しVEGFの発現増大による血管新生促進を引き起こすため、関連する因子の発現に対するカルノシン酸の影響についても遺伝子レベルで検討した。以上の結果からカルノシン酸はVEGF増大による血管新生や細胞増殖増大を抑制することにより、精神的なストレスによるがん進行を抑制する効果を示す可能性があることが明らかになった。 本研究より、ハーブ成分の抗がん作用の一つとして、精神的ストレスによるガン進行に対する抑制効果が期待できることが示唆された。
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