研究課題/領域番号 |
24700834
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
宮良 恵美 琉球大学, 医学部, 助教 (50457686)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アラビノガラクタンプロテイン / 免疫調節作用 / 生活習慣病予防 |
研究概要 |
田芋根茎の凍結乾燥粉末620 gよりアラビノガラクタンプロテイン(AGP)3.32 gを抽出した(収率0.54%)。AGP 1 mg/ml溶液の糖濃度は0.56 mg/mlであり(フェノール硫酸法、標準物質:ガラクタン)、構成単糖はGal 67.8%、Ara 24.7%、Glc 4.5%、Man 3.1%であった(イオンクロマトグラフィー)。タンパク質濃度は0.31 mg/ml(DCプロテインアッセイ法、標準物質:BSA)であった。イオン交換(DEAEトヨパール650M)ならびにゲルろ過(Sepharose CL-4B)カラムクロマトグラフィーによりさらに分画した結果、得られた分画は全てβ-glycosyl Yariv reagentに反応するAGPであることを確認し、分子量約60 kDa、140 kDa、180 kDaという比較的低分子量と1,500 kDaおよび1,900 kDaの高分子量AGPが存在することが明らかとなった。 マクロファージ様細胞株RAW264.7にAGP(最終濃度 0.1mg/ml)を37℃、48時間反応させた後、total RNAを抽出してDNAマイクロアレイ解析を行った。AGP無添加の細胞と比較して発現比率が2倍以上に上昇した遺伝子数は641(アノテーション数:290)、1/2以下に低下した遺伝子数は917(アノテーション数:407)であった。細胞の接着・分化・増殖に関与するインテグリンβやパーリカン、Gタンパク共役受容体等、複数のシグナル伝達因子に発現量の増加が認められた。血液・免疫関連の遺伝子変動は46あり、免疫を制御する主要なサイトカインではIL-1αが上昇したことから、T細胞・B細胞・NK細胞を活性化する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度計画していたAGPの精製と構成単糖分析を行い、沖縄産田芋のAGPがこれまでに報告されているタロイモや里芋のAGPと同じくタンパク質を含有するタイプIIアラビノガラクタンであることを確認した。基本的な加工特性については、加工前後で指標となる生理機能を明確に設定できなかったため、今後の課題として残った。 In vitroにおける免疫調節作用については、細胞株を用いたDNAマイクロアレイ解析によりAGPが炎症性サイトカインであるIL-1α mRNAの発現を上昇させることが明らかとなった。AGPが免疫調節に及ぼす影響を遺伝子レベルでみることはできたが、タンパク質発現レベルの検討や細胞株を用いた各種生理機能アッセイまでは行うことができなかった。また、予備実験で予想されたヘルパーT細胞(Th1/Th2)バランス調節作用についても詳細な検討には至っていない。 研究目的では①AGPの精製と加工特性の検討、②AGPの免疫調節作用と腸内環境改善作用の検討、③AGPの生活習慣病予防効果の検討の3項目を上げており、初年度で加工特性と免疫調節作用が完全には調べられなかったため、現在までの達成度は25%程度と考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初、2年目以降は動物実験やヒトに摂取してもらうin vivo試験を計画していたが、in vitroにおける機能を確実に抑えてから進めるために、引き続き培養細胞を用いた検討を行う。具体的には、C57BL/6マウスより脾細胞を初代培養して、AGP添加後に産生されるサイトカイン類をELISA法で測定し、Th1/Th2バランスや感染免疫に及ぼす影響を検討する。また、現在用いているRAW264.7だけでは免疫調節作用が明確にならなかったため、RAW264.7と小腸上皮様細胞株Caco-2の複合培養系で作成した腸管モデルを用いてAGPがマクロファージを中心とした腸管免疫に及ぼす影響をサイトカイン定量により検討する。腸管内腔側と基底膜側の培養液のAGPを測定することで消化・吸収性についても調べる。また、基本的な加工特性として、pH変化や加熱処理後のAGPを免疫調節作用が認められたアッセイに用いて機能が維持されるかを確かめる。 In vitro試験が終わり次第、免疫系モデルマウス(Th2型:BALB/c、Th1型:C57BL/6)を用いたAGP経口投与試験を行う。血清中サイトカインを測定するとともに、脾細胞を採取して各種表面マーカーをフローサイトメーターで分析することで個体レベルの免疫細胞の動態を検討する。 以上のように、次年度はAGPの免疫調節作用をin vitroならびにin vivo試験で詳細に検証して、それ以降のヒト摂取試験や生活習慣病予防効果の検討に繋げる方策である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(B-A)79,401円はDNAマイクロアレイ解析の結果、IL-1α以外に特徴的に変動したサイトカインが認められず、Th1/Th2バランス調節作用を具体的に検討できなかったために生じた。そこで次年度はこの予算を含めて、in vitro試験について初代培養脾細胞を採取するためのC57BL/6マウスとCaco-2細胞、サイトカイン測定キットの購入に物品費の約40%(28万円)を使用する予定である。残りの物品費(約40万円)をin vivo試験のマウス購入と飼育費用、血清サイトカイン測定キットならびに細胞表面マーカー抗体の購入に充てる。研究成果を学会発表するために旅費10万円を使用する計画である。
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