研究課題/領域番号 |
24700834
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
宮良 恵美 琉球大学, 医学部, 助教 (50457686)
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キーワード | アラビノガラクタンプロテイン / 免疫調節作用 / 生活習慣病予防 |
研究概要 |
本研究の目的は、田芋の水溶性食物繊維「アラビノガラクタンプロテイン(AGP)」について、培養細胞試験ならびに疾病モデル動物試験、ヒトを対象とした試験を行って免疫調節機能および生活習慣病予防効果を検証し、伝統食の再興と新規機能性食品開発へと展開することである。本年度は、マウス脾臓の初代培養細胞やマクロファージ細胞株と小腸上皮様細胞株の複合培養系を用いてAGPの免疫調節作用を検討する計画であったが、研究代表者の休業による研究中断で実験が困難だったため計画を変更して、前年度から継続実験が可能であったマクロファージ細胞株RAW264.7の貪食能および遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。AGPは60μg/mlの濃度まで細胞生存に影響を与えず、マクロファージの増殖亢進作用は認められなかったが、毒性もないことが明らかとなった。また、蛍光ラテックスビーズを用いた貪食能試験の結果、陽性対照のリポポリサッカライドは貪食能を亢進したが、AGP添加による影響はみられなかった。AGP添加後24時間培養におけるマクロファージの遺伝子発現変動をSurePrint G3 Mouse Gene Expression Array (8x60k, Agilent)により網羅的に解析したところ、免疫調節に関与するサイトカインならびに酵素の遺伝子発現量の増加が認められた。発現が変動したサイトカイン・酵素からはAGPによる抗ウイルス作用の亢進が示唆された一方、AGPがマクロファージのT細胞活性化補助機能を抑制する可能性も示唆された。今後、免疫系モデルマウスへAGPを投与して個体レベルの免疫調節作用を検討するとともに、肥満症モデル動物への投与試験やヒト摂取試験により生活習慣病に対するAGPの作用を調べたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は産前産後の休暇および育児休業の取得により実験期間が限定されたため、期間内に実施可能な内容に変更した。マクロファージ細胞株へのAGP作用時間を前年度の設定よりも短くし、より初期の免疫応答を検討して新たな知見を得ることができた。しかし、研究目的として掲げている①AGPの精製と加工特性の検討、②AGPの免疫調節作用と腸内環境改善作用の検討、③AGPの生活習慣病予防効果の検討という3項目について、具体的に進展したところは無かったことから、現在までの達成度は前年度とほぼ変わらない25%程度と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は育児休業取得のため引き続き研究を中断する予定であり、平成27年度および平成28年度までの期間延長を申請し承認された。これまでにマクロファージ細胞株を用いたin vitro試験でAGPの免疫調節作用が明らかになったことから、次年度(平成27年度)以降はin vivo試験に移行して個体レベルでの作用を検討する。具体的には免疫系モデルマウス(Th2型:BALB/c、Th1型:C57BL/6)へAGPを投与して各種サイトカインや細胞表面マーカーを測定することで免疫変動を分析し、肥満症モデルマウスへ投与して体重や血漿生化学成分(血糖やコレステロール等)および内分泌成分(インスリンやアディポネクチン等)を測定することで生活習慣病予防効果を検討する。動物実験の結果を考察しながら、ヒト摂取試験の方法・検証項目等の詳細を決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は休業取得により、これまで使用してきた培養細胞株のみを用いる実験に内容を変更したため、新規購入物品が少なく、次年度使用額が生じた。 平成26年度は引き続き約5ヶ月間の育児休業取得後、休業明けには動物実験申請や倫理審査等、実験再開に必要な準備を行うため、研究を再開する実質的な次年度は平成27年度となる。今年度生じた次年度使用額は平成27年度に動物実験の物品費(マウスの購入と飼育費、キット類購入費)として使用する予定であり、研究成果を学会発表するために旅費10万円を使用する計画である。
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