最終年度(平成28年度)は前年度測定キットが入手できず繰り越していた田芋アラビノガラクタンプロテインの抗ウイルス作用の検討から行った。田芋アラビノガラクタンプロテインを作用させたマウスマクロファージ細胞株(RAW264.7)では本物質を作用させていないコントロールと比較して、培養上清中の抗ウイルス因子であるインターフェロン(IFN)-λ3タンパク質の増加は認められなかった。腸内環境改善作用の追加試験として腸内細菌株培養上清の短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸等)を測定する計画であったが、田芋アラビノガラクタンプロテインが培地中で沈殿してしまい、沈殿の原因と考えられるプロテインの分解・除去が想定通りには進まず測定できなかった。また、主要な生活習慣病のうち、糖尿病に対する田芋アラビノガラクタンの予防的効果をマウス糖負荷試験で検討する予定であったが、試料量が足りず実施できなかった。必要なサンプル量が少量ですむ培養細胞株で脂肪取り込みの抑制効果を検討しようと試みたが、マウス細胞株の脂肪細胞への分化誘導がうまく行かず検討できなかった。 本研究は田芋の疾病予防・健康増進作用を調べる目的で行い、田芋アラビノガラクタンプロテインがマウスマクロファージ細胞株の抗ウイルス因子の一つである2'-5'オリゴアデニル酸合成酵素(OAS)を増加させる傾向にあり、乳酸菌類にも利用されて腸内環境を改善する作用が示唆された。しかし、生活習慣病予防効果の解明には至らなかったため、必要最小限の試料で実施できる適切な細胞培養モデル試験の設定および試料の単離・調整を行い引き続き検討したい。
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