研究課題/領域番号 |
24700836
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
向井 友花 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (60331211)
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キーワード | 妊娠期 / 植物ポリフェノール / 妊娠糖尿病 / フルクトース / 母児 / AMP活性化プロテインキナーゼ / サーチュイン |
研究概要 |
近年増加しつつある妊娠糖尿病は、母親自身や児の将来の2型糖尿病発症のリスクを高める。ある種の植物ポリフェノール、例えばレスベラトロールは、長寿遺伝子として知られるヒストン脱アセチル化酵素サーチュインや糖・脂質代謝の中心的な調節因子であるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、2型糖尿病や肥満の予防改善に有効であることが知られているが、妊娠期の生体における作用は分かっていない。そこで本研究は、妊娠糖尿病の母児の予後に及ぼす植物ポリフェノールの影響を明らかにすることを目的としている。前年度までに、妊娠糖尿病の母ラットから出生した雌性仔ラットは肝Sirt1-AMPKシグナル経路を介した糖代謝異常を示すという知見が得られた。そこで本年度は、妊娠糖尿病ラットに植物ポリフェノールを投与し、出生した仔ラットの肝臓や視床下部におけるAMPKの発現や活性に及ぼす影響を検討した。 妊娠ラットに出産までの3週間、10%(w/v)D-フルクトース溶液を自由摂取させ、自然分娩後は蒸留水を与え3週間授乳させた。授乳期には通常食(FC群)または0.1%メリンジョ由来ポリフェノール含有食(FM群)を与えた。離乳直後に仔ラットの一部を解剖し、残りの仔ラットは通常食で17週齢まで飼育し解剖した。 離乳直後では、雌雄仔ラットのFM群は摂餌量が高値であり、摂食行動に関係している視床下部AMPKのリン酸化が亢進していた。肝AMPKのリン酸化は、雌性仔ラットのFM群で亢進していた。離乳後は全ての群に通常食を与えたにもかかわらず、17週齢の雌性FM群は血糖値が有意に低値であり、肝AMPKのリン酸化が亢進していた。 以上のことから、妊娠期にフルクトースを過剰摂取した妊娠糖尿病モデルにおいて、メリンジョ由来ポリフェノールは離乳直後の仔ラットの視床下部AMPK活性化を介して摂食行動に影響を及ぼし、成長後の雌の肝AMPK活性化を介して糖代謝を改善することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、妊娠糖尿病の母児の予後に及ぼす植物ポリフェノールの影響を明らかにすることである。現在までに、妊娠糖尿病モデルラットにレスベラトロールを含むメリンジョ由来ポリフェノールを投与すると、その仔ラットの肝および視床下部のAMPK活性が上昇することを明らかにした。このことから、植物ポリフェノールが母児の糖代謝改善に有効である可能性を見いだすことができた。 加えて、平成26年度に植物ポリフェノールが糖代謝異常を改善する分子機構について培養細胞実験系を用いて明らかにするため、植物ポリフェノールを添加した肝細胞の最適培養条件の検討等を行った。 したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、妊娠糖尿病モデルラットを用いて植物ポリフェノールによるAMPK活性化を介した糖代謝改善の可能性を見いだした。平成26年度は、培養細胞実験系において、妊娠期に摂取する植物ポリフェノールが肝細胞における糖・脂質代謝に及ぼす影響の分子機構を検討する。すなわち、妊娠期に胎盤から分泌されるホルモン(プロゲステロンや胎盤ラクトーゲンなど)の曝露下におけるヒト肝株化細胞(HepG2)内のAMPKやサーチュインを始めとしたインスリンシグナル伝達系に関与する因子の発現や活性を調べ、植物ポリフェノールの添加によるこれらの変動を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の研究遂行に必要かつ十分な物品を購入した結果、26,744円の未使用金が生じた。次年度には細胞培養実験を複数回行う予定であり、これに必要な物品の購入のため、次年度助成金と合わせて使用することが効率的であると考えられたため。 平成25年度の未使用金と平成26年度の助成金を合わせ、培養細胞を用いた植物ポリフェノールの糖代謝異常改善メカニズムの解析のために、細胞培養と発現解析に必要な器具、培地および試薬類の購入に充当する。
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