研究課題/領域番号 |
24700838
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
伴野 勧 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 客員共同研究員 (60554011)
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キーワード | アルデヒド / LC/MS / 酸化ストレス / 脂質過酸化 / カルボニル |
研究概要 |
近年、4-ヒドロキシ-2-ノネナールやアクロレインなどの酸化ストレス環境下で増加する種々のアルデヒド化合物が心血管疾患や神経変性疾患などの様々な生活習慣病の発症や進行に関与することがわかってきている。本研究では、これら種々のアルデヒド化合物の網羅的分析法を開発し、酸化ストレス関連疾患の早期診断マーカー探索を行う。本年度は昨年度に続いて、開発したLC/ESI-MS/MS(SRM)によるアルデヒド化合物の網羅的解析法の応用として、生体試料分析時の分析法の妥当性について検討を行った。 4-ヒドロキシ-2-ノネナールやヘキサナール、グリオキサールなどのアルデヒド標準品を培養細胞溶解物やマウス血漿や脳組織ホモジナイズ液に一定量添加した後、アルデヒド化合物を含む画分を抽出し、アルデヒド基やケトン基と特異的に反応するダンシルヒドラジン(DH)を用いて誘導体化し、DH誘導体に特徴的なフラグメントイオン(m/z 236.1)を利用したLC/ESI-MS/MS(SRM)により、アルデヒド化合物の回収率(Recovery)、正確度(Accuracy)、精度(Precision)を求めた。その結果、回収率、正確度、精度ともに良好な結果が得られ、本分析法は培養細胞や動物組織などの生体試料中のアルデヒド化合物を網羅的に定量可能であることが認められた。 また、本法を用いてフォルボールエステルによる活性化好中球様HL-60細胞やアミロイドβを曝露した神経細胞様PC-12細胞など酸化ストレス条件下において培養後、生成されるアルデヒド化合物の消長を網羅的に解析した。その結果、様々なアルデヒド化合物の生成が確認され、培養細胞由来のアルデヒドを高感度網羅的に検出・定量することが可能であり、本法が酸化ストレスにより生成されるアルデヒド化合物の網羅的解析に有効であることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、24年度で開発したLC/ESI-MS/MS(SRM)によるアルデヒド化合物の網羅的解析法の応用として、生体試料分析時の分析法の妥当性について検討を行った。その結果、4-ヒドロキシ-2-ノネナールやヘキサナール、グリオキサールなどのアルデヒド標準品を培養細胞溶解物やマウス血漿や脳組織ホモジナイズ液に一定量添加した後、アルデヒド化合物を含む画分を抽出した。その後、網羅的アルデヒド解析法に付し、アルデヒド化合物の回収率(Recovery)、正確度(Accuracy)、精度(Precision)を求めた結果、良好な結果が得られ、本分析法は培養細胞や動物組織などの生体試料中のアルデヒド化合物を網羅的に定量可能であることが認められた。 また、本法を利用して活性化好中球様HL-60細胞や神経細胞様PC-12細胞などを酸化ストレス条件下において培養後、生成されるアルデヒド化合物の消長を網羅的に解析した結果、様々なアルデヒド化合物の生成が確認され、培養細胞由来のアルデヒドを高感度網羅的に検出・定量することができた。このことからも本法が酸化ストレスにより生成されるアルデヒド化合物の網羅的解析に有効であることが認められた。
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今後の研究の推進方策 |
酸化ストレス関連疾患の早期診断マーカー探索のための網羅的アルデヒド解析法の開発とその応用を目的として、26年度は、脂肪蓄積と高血糖、高脂血症などを自然発症する2型糖尿病モデルマウスである肥満・糖尿病マウス(ob/ob)およびその対照群(C57BL/6Jマウス)を飼育し、糖尿病発症前から発症後・進行時の種々のアルデヒドの消長を測定する。飼育期間中は、血糖・血圧・血中脂質・内臓脂肪や血中サイトカインなど病態生理学的変化をモニタし、血液を経時的に採取する。解剖時には脂肪組織、脳、肝臓、膵臓、血液などの臓器を採取し、アルデヒドーム解析に付し、肥満に伴う炎症マーカー及び糖尿病早期診断マーカー・治療ターゲットの探索を行う。そのための動物実験のための動物・飼料費等、LC/MS解析費(有機溶媒、カラム等)が必要となる。また、本法を用いて食品中成分の酸化ストレス制御機能評価(試薬費等)を行い、有効成分の探索も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に計画していた網羅的アルデヒド解析法を用いた食品中成分の酸化ストレス制御機能評価、有効成分の探索(試薬費等)が行えなかったため、そのための試薬費等を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。 26年度は動物実験のための動物・飼料費等、LC/MS解析費(有機溶媒、カラム等)、一般試薬費等が必要となる。また、食品中成分の酸化ストレス制御機能評価、有効成分の探索に一般試薬費等が必要となる。
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