前年度までの研究において,ユリネ摂取は高脂肪食摂取ラットの腸内環境と脂質代謝を改善すると共に,肝障害を抑制する作用が示された。今年度は,ユリネのエタノール抽出物およびその残渣物が高脂肪食摂取ラットの腸内環境に及ぼす影響を調べ,腸内環境改善に関与する画分を検討した。また,ユリネ摂取がラットのデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導大腸炎に及ぼす影響についても検討を加えた。
1.高脂肪食(30%牛脂)を基本食として,ユリネ粉末,エタノール抽出物及びエタノール抽出残渣物を添加した飼料をラットに摂取させたところ,糞と盲腸内容物中のMucin含量はユリネ粉末食とユリネ残渣物食群で顕著に増加した。盲腸内容物中の有機酸含量は,ユリネ粉末食及びユリネ残渣物食群において有意に増加したが,エタノール抽出物食群による影響は認められなかった。盲腸内容物中のBifidobacterium spp.は,ユリネ残渣物食群で有意に増加した。 2.高脂肪食(30%牛脂)を基本食として,ラットをControl群,DSS投与群,DSS投与+ユリネ添加食群の3群に分け検討したところ,臨床症状の指標であるDAIスコアはDSS投与+ユリネ添加食群で有意に抑制された。大腸の長さはControl群と比較してDSS投与群で有意に短くなったが,DSS投与+ユリネ添加食群で回復する傾向を示した。糞中Bifidobacterium spp.は,Control群と比較してDSS投与群で減少したが,DSS投与+ユリネ添加食群はこの減少をControl群と同程度にまで回復させ,Lactobacillus spp.についても同様の傾向を示した。
以上の結果より,ユリネ摂取による腸内環境改善作用は,主にエタノール抽出残渣画分の作用が関与していると推察された。また,ユリネ摂取はDSS誘導性大腸炎を抑制する可能性が示された。
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