研究課題/領域番号 |
24700846
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
斉藤 麻希 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (40365185)
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キーワード | n-3系多価不飽和脂肪酸 / 肺高血圧症 |
研究概要 |
本研究の目的は、肺高血圧病態下において DHA, EPA といった n-3系多価不飽和脂肪酸 (n-3PUFA) 投与が肺高血圧治療に有益であるか否かを明らかにすることである。 ①肺高血圧ラット組織における n-3PUFA受容体 GPR120 発現に関する検討:申請者はこれまでに、抗炎症効果を有する薬物 (sPLA2 阻害薬、アンギオテンシン AT1 受容体拮抗薬)が肺高血圧病態を改善しないものの、肺高血圧病態ラットの生存率を有意に改善する結果を得ているが、この効果に対して n-3PUFA が相加・相乗的効果を発揮する余地があるか否かについて検討するため、アンギオテンシン AT1 受容体拮抗薬処置ラットの摘出肺組織における GPR120 mRNA 発現の有無を調べた。その結果、ラット肺には常に一定量の GPR120 が発現していることが分かり、肺高血圧病態下でその発現がやや増大する傾向にあった。 ②肺高血圧ラット肺組織における炎症関連因子の発現に対する n-3PUFA 慢性投与の効果:n-3PUFA が肺高血圧ラット肺における炎症関連因子の発現に影響を与えるか否か、in vivo で調べた。n-3PUFA 供与体として魚油、対照としてコーン油 (n-6PUFA)を 3 週間投与した。肺高血圧ラットではインフラマソーム関連因子である IL-18 発現が増大したが、魚油投与群ではそれが抑制された。一方、コーン油投与群では、更なる発現増大が観察された。以上の結果から、肺高血圧時の n-3PUFA を負荷は、増大した GPR120 を介してインフラマソーム関連因子の発現を制御しうる可能性が示された。 ③n-3PUFA受容体 GPR120 の肺動脈平滑筋細胞における役割を解明するため、GPR120 強制発現肺動脈平滑筋細胞の樹立を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度から、教務関連業務(実務系基礎実習等)が増えたことなどから、薬物長期投与実験など、長期間の継続が必要な実験の実施可能時期が限定された。そのため、当初予定していた動物実験の例数追加が捗らなかった。しかし、次年度早々に動物実験を開始することによってリカバー可能な範疇であると考える。また、研究を進めるなかで、n-3PUFA の効果を検討するにあたり、その受容体である GPR120 の役割についても同時に検討する必要性が浮上した。そこで、申請当初は計画されていなかったが、GPR120 強制発現肺動脈平滑筋細胞樹立に着手した。こちらは比較的順調に進捗しており、来年度には機能実験に取りかかる予定である。交付申請書に記載した実験計画に関してはやや遅れているものの、研究全体としては概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に計画していた動物実験は、可能な限り早期に実行し、必要サンプルの取得に努める。サンプルを得次第、炎症関連因子発現について、リアルタイム PCR とウェスタンブロットでの確認を進める。アポトーシスの有無については、取得済みのものも含めゲノムDNAを調整後、アガロース電気泳動法及び組織化学により検出する。 それと並行し、培養肺動脈平滑筋細胞 (PASMC) を用いた実験も進める。まずは、PASMC に肺動脈病態時の肺動脈に掛かるのと同程度の伸展刺激負荷を与えることによる β型 PDGF受容体の細胞表面発現量増大に対して、 n-3PUFA が何らかの抑制効果を示すか否かを調べ、同時に GPR120 発現変動の有無についても調べる。培養GPR120強制発現肺動脈平滑筋細胞を樹立するために、N 末端 RFP 融合 GPR120 発現用ベクターの構築を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
・動物実験の進捗が若干遅れたため、実験動物、試薬および消耗品等の購入量が予想を下回った。 ・平成25年度分の動物実験は、次年度に速やかに遂行する予定である。必要な実験動物、試薬および消耗品の購入を速やかに行う。
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