研究実績の概要 |
平成26年度は、(1)肺高血圧時の肺血管機能異常に対する n-3PUFA 持続投与の効果を明らかにすること、(2)肺高血圧時の右心室および肺組織において発現が変動する炎症関連因子を検出すること、(3)肺高血圧ラットに対し延命作用を示すアンギオテンシンII AT1 受容体拮抗薬オルメサルタンの効果の再確認と n-3PUFA の併用効果に関する検討を中心に計画した。 (1) 肺高血圧を誘発するモノクロタリンを投与すると同時に、n-3PUFA のソースとして魚油(2 mL/head/day)もしくは、対照として n-6PUFA のソースであるコーン油 (2 mL/head/day) の経口投与を開始した。約 3 週後に肺動脈を摘出し、肺高血圧時の肺動脈内腔圧 (40 mmHg) に相当する約 15 mN の伸展刺激を与え、その張力変化を観察した。健常対照群では、律動性収縮等の血管機能異常は観察されなかったが、コーン油投与肺高血圧群および魚油投与肺高血圧群では律動性収縮や緊張性収縮が観察された。以上のことから、n-3PUFA単独摂取では肺高血圧時の肺動脈収縮異常を抑制し得ない可能性が示された。 (2)モノクロタリン肺高血圧ラットの右心室では炎症性サイトカインである IL-6 および組織線維化に関わる GDF15 の mRNA 発現が有意に増大していることを見出した。その他、有意ではないものの、IL-1beta, IL-18, TGF-beta1, CTGF の mRNA 発現が増大の傾向にあった。肺でも IL-6 mRNA 発現が有意に増大していた。 (3)オルメサルタン投与により、再現性よくモノクロタリン肺高血圧ラットの生存期間が延長することを確認した。さらに、右心室における IL-6 および GDF15 の有意な発現増大をほぼ完全に抑制することを見出した。
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